【日本経済】少子高齢化はプラス要因? 近い将来、日本は高度成長期と同じ環境になる

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高度成長期にインフレギャップ状態が「続いた」理由

それでは、なぜ高度成長期はインフレギャップ状態が「続いた」のだろうか。所得創出のプロセスを理解すれば、理由が分かる。

所得創出のプロセスは、
「生産者が働き、付加価値(モノ・サービス)を生産し、消費・投資として支出(購入)されることで所得が創出される」

となっている。GDP三面等価の原則により、「付加価値」「支出」「所得」の三つは必ず同額になる。そして、生産性向上とは「生産者一人当たりの付加価値」が増えることだ。

すなわち、企業の設備投資等で生産性が向上すると、「生産者一人当たりの所得」も拡大するのである。分かりやすく書くと、生産者が「豊かになる」わけだ。

豊かになった生産者、あるいは日本国民は、消費や住宅投資を増やす。すると、需要(名目GDP)における「民間最終消費支出」「民間住宅投資」が拡大してしまう。結果、インフレギャップは埋まらない。

お分かりだろうか。高度成長期の日本では、供給能力面では、
「インフレギャップを埋めるため、設備投資、人材投資、公共投資で生産性を向上させる」
ことを目指したのだが、実際に生産性が向上すると、国民の所得が増えてしまい、
「国民の消費や投資が増え、名目GDPが拡大することでインフレギャップが広がる」
という現象が起きていたのだ。

供給能力と需要が、追いかけっこをして共に増加していったのが高度成長期なのである。

現在の日本は、未だにデフレギャップ状態(内閣府試算で約14兆円)にあるが、「幸運」なことに生産年齢人口が減っていっている。生産年齢対総人口比率が低下していっている以上、我が国は近い将来、間違いなくインフレギャップ状態になる。

つまりは、高度成長期と同じ環境になるのだ。

インフレギャップ状態に突入した日本が、外国人労働者に頼らず、
「生産性向上のため、企業が設備投資・人材投資を、政府が公共投資を拡大する」
という、正しい施策を講じれば、我が国の経済成長率は大きく高まることになる。

人口の減少など、現実には大した問題ではない。1億2千万人の人口を抱える国にとって、例えば毎年25万人、人口が減少したとしても、減少率は0.2%に過ぎない。

それに対し、高度成長期の「生産者一人当たりの実質GDP」は、平均5%で増えていった。すなわち、生産性が5%ずつ上昇していったわけである。0.2%の人口減少など、軽くカバーしてお釣りがくる。

日本国民は「生産性向上」こそが経済成長の鍵であることを、改めて理解する必要がある。

 

『週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』 Vol.298より一部抜粋

著者/三橋貴明
中小企業診断士。07年頃、「2ちゃんねる」上での韓国経済に対する分析、予測が反響を呼ぶ。『本当はヤバイ!韓国経済』(彩図社)など著書多数。
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