750万ドルの「仲介者」――ビル・ゲイツとレオン・ブラックの資金
エプスタインがMITメディアラボに直接寄付した金額は、MITが公式に認めた85万ドル(2002年から2017年)だけではなかった。伊藤は「仲介者」として、はるかに大きな金額を動かしていた。
2014年10月、ビル・ゲイツがメディアラボに200万ドルを寄付した。伊藤は内部メールにこう記した。
「これはビル・ゲイツからの200万ドルの寄付で、ジェフリー・エプスタインによって指示されたものだ(This is a $2M gift from Bill Gates directed by Jeffrey Epstein)」
コーエンは返信した。
「寄付記録の目的上、ジェフリーの名前をこの寄付の推薦協力者として記載することはしない(For gift recording purposes, we will not be mentioning Jeffrey’s name as the impetus for this gift)」
大学に提出された正式な記録には、「ゲイツは匿名を希望する友人の推薦によりこの寄付を行う」とだけ記されていた。コーエンは同僚に、「これが何十人もの人に配布されるとは思わなかった」と書き、エプスタインの名前は記されていないが「質問される可能性がある」と懸念を表明。今後、エプスタイン関連の提出書類は「公開情報にならない場合のみ」提出すべきだと指示した。
ゲイツの代理人はメディアラボ幹部に、ゲイツもこの寄付に関する公的議論から名前を伏せておきたいと伝えた。(なお、後に、ゲイツの広報担当者は「エプスタインがビル・ゲイツのプログラムまたは個人的な寄付を指示したという主張は完全に虚偽である」と否定している)。
しかし、今年2026年1月31日に公開された新たなエプスタイン文書は、この否定に疑問を投げかけている。
2014年10月の電子メールで、エプスタインとゲイツのトップアドバイザーであるラリー・コーエン(ゲイツ・ベンチャーズCEO)が「Re: MIT」という件名でやり取りしていた記録が発見された。コーエンはエプスタインに「彼ら(MIT)に、我々が書類を準備中で、11月3日に送金すると知らせましょう」と書いている。
さらに重要なのは、エプスタインがゲイツの別のアドバイザー、ボリス・ニコリックとの会話について報告しているメールだ。エプスタインはコーエンに、ニコリックがゲイツの最高投資責任者マイク・ラーソンと1時間話し、「ビルはファンドの25%以上を出すことはできない」と言われたと報告している。
これらの文書は、ゲイツ陣営の否定にもかかわらず、エプスタインがゲイツのMITへの寄付に深く関与していたことを強く示唆している。
500万ドルの謎――レオン・ブラックの寄付
アポロ・グローバル・マネジメント創業者のレオン・ブラックからは、さらに大きな金額が動いた。今回(2026年)公開された文書により、エプスタインが調整した500万ドルの寄付の存在が初めて確認された。
2015年5月、伊藤、コーエン、エプスタインの間で交わされた電子メールで、コーエンは伊藤に尋ねている。
「レオンが匿名の寄付者になりたいかどうか、大学側が知る必要がある。ジェフリーに聞いてレオンに確認してもらえないか?(Can you ask Jeffrey to ask Leon that?)ちなみに簡単に匿名にできる。レオンがクレジットを望むなら別だが」
コーエンはさらに続けた。
「もしジェフリーがレオンはMITから少し敬意が欲しいと言うなら、それも手配できる。でも、今のところ、学長を含めて誰も彼を訪問しようとはしない」
伊藤はこのメールをエプスタインに転送した。
2015年10月、伊藤はエプスタインにメールを送り、ブラックからの最初の100万ドルを受け取ったことを確認し、年末までに残りの400万ドルを「待っている」と述べた。
2015年11月、大学管理部門が伊藤に、ブラックの寄付金支払いが2015年末までに期限を迎えると通知した際、伊藤はこのメールチェーンをエプスタインに転送し、寄付の状況を尋ねた。エプスタインは簡潔に「リマインダーを送れ(send reminder)」と返信した。
ブラックの広報担当者は、ブラックはこの寄付を匿名にするつもりはなかったと主張しているが、これらの文書は別の物語を語っている。
伊藤穣一は、エプスタインを単なる寄付者としてではなく、資金調達のパートナー、いや、共同事業パートナーとして扱っていたのである。
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