エプスタイン文書が暴く資金の流れ。「伊藤穣一」「ビル・ゲイツ」「MIT」を結ぶ“不都合なカネ”の核心

 

伊藤穣一の弁明と辞任

2019年8月16日、エプスタインとの関係が最初に報じられた後、伊藤はMITメディアラボのウェブサイトに謝罪文を掲載した。

「私はエプスタインと2013年に信頼できるビジネス上の友人を通じて会議で出会い、メディアラボの資金調達活動の中で、彼を研究室に招き、彼の複数の住居を訪問しました」

「複数の住居」――これにはニューヨークのエプスタインのタウンハウス、カリブ海のプライベート島(エプスタイン島)、ニューメキシコの牧場が含まれていたことが後に判明する。

伊藤は続ける。「エプスタインとのすべての交流において、私は彼が告発された恐ろしい行為に関与したことは一度もなく、彼がそれについて話すのを聞いたこともなく、証拠を見たこともありませんでした」

これは本当だろうか?

スウェンソンの証言によれば、伊藤はエプスタインが「2人の女性アシスタント(被害者とみられている)なしでは決して部屋に入らない」ことを知っており、それをスタッフに伝えていた。伊藤はエプスタインのニューヨーク、カリブ海、ニューメキシコの住居を訪問していた。

「伊藤が何も疑わしいものを見なかったという主張は信じがたい(implausible)」とスウェンソンは言う。「最良の場合でも、問題を否定することに加担していた。最悪の場合については考えたくない」

伊藤の謝罪は不十分だった。そして2019年9月6日、ロナン・ファローのニューヨーカー誌記事が公開された。

記事は、MITメディアラボがエプスタインの寄付を組織的に隠蔽していたこと、伊藤がエプスタインを通じて少なくとも750万ドルの寄付を調整していたこと、そして個人的に120万ドルを受け取っていたことを詳細な証拠とともに暴露した。

翌日、2019年9月7日、伊藤穣一はMITメディアラボ所長を辞任した。

伊藤は辞任のメールでこう書いている。

「過去数日と数週間にわたってこの件について熟考した結果、私がメディアラボの所長として、さらに教授および研究所の職員として、即座に辞任するのが最善だと思います」

しかし、辞任したのはMITだけではなかった。伊藤は同日、ニューヨーク・タイムズの取締役会からの辞任も発表した(ボード)。世界最高峰のメディアが、幼児性愛者との深い関係をもつ人物の存在を許すはずもない。当時の様子も含め、NYTに聞くと、伊藤の現在の評価は「テック業界における倫理を軽視する典型的な人物」「エプスタインをめぐる権力構造を担った危険人物」として突き放しており、NYTの論説でも「信頼を損なったリスクのある人物」として批判されている。

さらに、伊藤はバイオテクノロジー企業ビルダーPureTech Healthの会長職からも辞任せざるを得なくなった。

MIT幹部の責任――ラファエル・ライフ学長と管理者たち

「結果論で言えば、私たちは恥と苦悩を共有しています。私たちMITは、エプスタインの評判を高めることに貢献することを許してしまいました。それが、彼の恐ろしい行為から世間の注意をそらすことに役立ってしまいました。どんな謝罪もそれを取り消すことはできません」

MITのラファエル・ライフ学長は2019年8月、謝罪文を発表した。しかし、彼自身もエプスタインとの関係に関与していたことが後に明らかになる。

2012年、ライフが学長に就任してわずか6週間後、彼はエプスタインの寄付に対する感謝状に署名していた。2019年9月、ライフはこの事実を認めざるを得なくなった。「伊藤がこの最初の寄付を保持する許可を求め、私の上級チームのメンバーがそれを許可しました」

さらに、エプスタインの寄付は「私が出席していた、少なくとも一度のMITの定期上級チーム会議で議論されました」とライフは述べた。

Goodwin Procterの報告書によれば、MIT財務担当副学長イスラエル・ルイス、資金開発担当副学長ジュリー・ルーカスを含む複数の幹部が、エプスタインの寄付を承認していたとされる。ルイスは電子メールで「今のところ、このやり方で7桁の寄付を受け入れられる。金額がもっと大きければ、再度議論すべきだ」とも書いていた。

後に、ルイスは「500万ドル以下なら年間受け入れ可能」とし、「100万ドルまたは200万ドルのレベルでは広報の必要なし」と述べている。

報告書を作成した調査官たちは、「エプスタインのアカウント以外に、MITが匿名指定した寄付者の存在は確認できなかった」と記している。

2019年12月、MITはルイスが春学期末に辞任すると発表した。

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