エプスタイン文書が暴く資金の流れ。「伊藤穣一」「ビル・ゲイツ」「MIT」を結ぶ“不都合なカネ”の核心

 

内部告発者の勇気――シグネ・スウェンソンの証言

「私の仕事は秘密を守ることだと感じていた」

シグネ・スウェンソンは、ガーディアン紙のインタビューでこう語った。

2014年に採用された際、スウェンソンは自分の職務の一つが「伊藤穣一とジェフリー・エプスタインの既存の関係を支援すること」だと告げられた。エプスタインがMITの中央寄付者データベースで「不適格(disqualified)」とされていることを知っていたスウェンソンは、「彼は犯罪的な小児性愛者だと伊藤に指摘した」と言う。「エプスタインと仕事をするのは良いアイデアに思えない」と告げたが、結局、ラボの仕事を尊重して職を受け入れた。

しかし、入所後の最初の週に、スウェンソンはコーエンと伊藤から、エプスタインからお金を受け取りながら大学内で報告しない方法についての相談を受けている。コーエンが「なんとかして匿名にする方法はないか?」と尋ねると、スウェンソンは大学の内部報告要件が存在するため、寄付を隠す方法はないと答えている。スウェンソンでは、伊藤は「小額の寄付なら匿名で受け取れるのでは」と語ったという。

2015年、エプスタインがメディアラボを訪問する際、スウェンソンは「小児性愛者が私たちのオフィスに来るんだという事実に衝撃を受けた」と語る。コーエンはエプスタインが「よくない人物(unsavory)」であることに同意したが、「とにかく実行するつもりだ――これは伊藤のプロジェクトだった」と言った。

3年間働いた後、スウェンソンは辞職した。「自分や他の女性スタッフの意見が通ることはないと悟った」からだ。

2019年8月、エプスタインが逮捕され、その後拘置所で自殺すると、スウェンソンは行動を起こすことを決意した。伊藤とMITの限定的な認容と謝罪を見て、「MITが権威を守り、関係者の立場を守り、都合のよい情報だけを出して、謝罪と贖罪を提したようにみせ――組織防衛をしながら、物語の死ぬことを望んでいる」と感じたからだ。

スウェンソンは内部告発者支援団体「Whistleblower Aid」の支援を受け、ロナン・ファロー記者に証言した。それが、2019年9月のニューヨーカー誌のスクープ記事につながったのである。

セス・ロイド教授――刑務所とプライベート島への訪問

伊藤だけではない。MIT機械工学教授のセス・ロイドもエプスタインと深い関係を持っていた。

ロイドは2004年、有名な文芸エージェント、ジョン・ブロックマンの主催する「エッジ・ビリオネアズ・ディナー」でエプスタインと出会った。(このブロックマンという人物は、エプスタインを多くの有名科学者に紹介した責任があるとされている)

2008年、エプスタインが性犯罪で有罪判決を受け、フロリダ州の刑務所で服役していた時期――ここが重要だ――ロイドはエプスタインを刑務所に訪問している。

ロイド自身が2020年1月に公開した謝罪文で認めている。

「エプスタイン氏の逮捕とその後の有罪判決を知ったとき、私は深く動揺した。(子供は売春婦ではない、という事実に気づくべきだったとも書いている)。しかし、熟考の末、私はフロリダでの刑期中にエプスタイン氏を訪問することにした。当時、私はそれが良い行いをしているのだと信じていた」

性犯罪者が刑務所に服役している最中に、MIT教授が面会に行く――これが「良い行い」だと?

ロイドは続ける。

「エプスタイン氏は自らの行為に対する後悔を表明し、決して再犯はしないと私に約束した」

釈放後、ロイドはエプスタインの開催する科学者たちとのミーティングへの参加を再開し、2012年と2017年にエプスタインの財団から2つの助成金を受け取った。さらに、ロイドはエプスタインから個人的に6万ドルの贈り物を受け取っていたが、これはMITに報告されてはいなかった。

Goodwin Procterの報告書によれば、ロイドはエプスタインのプライベート島を少なくとも5回訪問している。

今回(2026年)に公開された文書では、2013年、ロイドがハーバード大学のマーティン・ノワック教授と共にエプスタインのニューメキシコ牧場を訪問する招待を受け入れたことを示す電子メールが見つかっている。

さらに衝撃的なのは、2014年のノワックとエプスタインの間の電子メールだ。ノワックが「我々のスパイは任務を完了した後に捕らえられた」というメッセージを送ると、エプスタインは「あなたは彼女を拷問したのか(did you torture her)」と返信している。

この「彼女」とは誰のことなのか?

2020年1月、MITは調査報告書の公表後、ロイドを有給の休職処分とした。だが、現在もロイドは終身在職権のある教授としての地位を保持している。

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