エプスタイン文書が暴く資金の流れ。「伊藤穣一」「ビル・ゲイツ」「MIT」を結ぶ“不都合なカネ”の核心

 

抵抗した人々――イーサン・ザッカーマンの抗議辞任

ただし、MITでは全員が共犯だったわけではない。

イーサン・ザッカーマン准教授は、2013年から伊藤に対してエプスタインとの関係について度々、懸念を表明していた。ザッカーマンは教授会の後に伊藤を引き留め、「君はエプスタインと会っていると聞いた。それは良いアイデアだとは思わない」と語っている。

伊藤は「彼は本当に魅力的な人物なんだ。どうだ、会ってみたいか?」と答えている。ザッカーマンは伊藤の申し出を断固として断ったうえで、「エプスタインとの関係はメディアラボにとって悲劇的な結果をもたらす可能性がある」と忠告している。

2019年8月9日、エプスタインが拘置所で死亡した翌日、ザッカーマンは伊藤と話をした。その夜、伊藤はザッカーマンに、メディアラボのエプスタインとの関係が「はるかに深い(went much deeper)」ことを告げた。

伊藤とエプスタインの間のビジネス、伊藤のベンチャーキャピタルファンドが支援する企業への投資、エプスタインによるメディアラボへの寄付と訪問、そして伊藤によるエプスタインの別荘などへの訪問が含まれていた。

ザッカーマンは即座に決断した。

「私たちのグループが行っている仕事は、社会正義や疎外された個人と社会の包摂に焦点を当ててきました。その私たちが、エプスタインとの関係を偽装し、自らの価値観に明確に反する行為を容認する人物ら(伊藤とロイドのこと)と、正義面をして仕事を続けることは困難です」

そして、2019年8月21日、ザッカーマンは抗議の辞職を発表した。

ザッカーマンは2018年のメディアラボ「Disobedience Prize(不服従賞)」の受賞者――STEMにおける#MeToo運動に取り組む3人の女性――に次のような謝罪の手紙を送った。「性的嫌がらせと暴行と戦う彼女たちの科学技術分野での仕事が、メディアラボとの関連によって損なわれるかもしれないというのは、ひどい皮肉だと感じました」

他の共犯者たち――エド・ボイデン、ニール・ガーシェンフェルド、そしてリード・ホフマン

伊藤とロイド以外にも、複数のMIT関係者がエプスタインと関わっていた。

エド・ボイデン教授(神経科学者、MITメディア・アーツ・アンド・サイエンス)は、2020年の報告書の後に声明を発表し、エプスタインが「重大な犯罪で有罪判決を受けていたことを知りながら」、キャンパス内外でエプスタインとの会議に出席したことを後悔していると述べた。

報告書によれば、ボイデンはエプスタインをキャンパス外で「少なくとも5回」訪問し、研究と潜在的な資金提供について議論したことを認めている。

2026年に公開された文書では、2013年、ボイデンがエプスタインのニューメキシコ牧場を訪問する申し出を受け入れたことを示す電子メールが見つかった。

さらに衝撃的なのは、2015年のボイデン、エプスタイン、伊藤の間の電子メールだ。ボイデンは、エプスタインと伊藤の言及した「コーチ」に会うことに熱心だと書いた。その後、エプスタインは伊藤と私的にやり取りし、ボイデンが必要とするコーチが「『ピッチ』コーチなのか、それとも女性の選び方のコーチなのか(the ‘pitch’ coach, or the how to pick women coach)」と冗談を言った。

ニール・ガーシェンフェルド教授(物理学者・コンピューター科学者)は、2013年にMITキャンパスへのエプスタインの複数回の訪問中にエプスタインと会った。ガーシェンフェルドは後にエプスタインの自宅での食事に招待されている。

2014年の電子メールで、ガーシェンフェルドはエプスタインに自分のオフィスでの「ランチ」を確認し、将来の祝賀会に言及して「サングラスとビーチボールはオプション」で、「うまくいけば、これはもっと楽しい場所で会うためのウォームアップになる(hopefully this will be a warm-up for meeting in more entertaining venues)」と付け加えている。

そして、リード・ホフマン――LinkedInの共同創業者で億万長者のベンチャーキャピタリストも、この醜聞に深く関与していた。

ホフマンは伊藤を通じてエプスタインと関わり、メディアラボへの寄付にも関連していた。2019年9月、ホフマンは謝罪声明を発表し、「ジョイ・伊藤が私にジェフリー・エプスタインを紹介した時、私はエプスタインの恐ろしい背景については知りませんでした」と述べた。

2013年7月19日、エプスタインはMITキャンパスを訪問し、伊藤とリード・ホフマンと会った――これはGoodwin Procter報告書に記録されている。

ホフマンは後に、伊藤がエプスタイン問題で批判を受けた際、私的な電子メールで伊藤を擁護していたことも明らかになった。

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