【1-2.有権者が見ていたのは、給油所の看板】
今回の選挙の争点を一つに絞るなら、それは物価、とりわけ燃料の値段でした。
米ヤフー・ニュースが投票日に伝えた米ギャラップ社の調査では、登録有権者の47%が、イランとの戦争を投票の判断で「極めて重要」と答えていました。経済と医療の50%に次ぐ高さで、外交と安全保障の問題がここまで上位に来る中間選挙は、私の記憶にもほとんどありません。
2月末に始まったイランとの戦争は、ホルムズ海峡を不安定にし、原油の値段を押し上げ、それが米国の家庭のガソリン代に跳ね返りました。もちろん、医療や政権の運営そのものへの評価など、ほかの要因も重なっていたはずで、結果のすべてを一つの争点で説明することはできません。
米AP通信の有権者調査によれば、イランへの軍事行動を「誤った判断だった」とした有権者は約6割に上りましたが、戦争を投票の決め手に挙げたのは約3分の1で、暮らしの費用や政府の腐敗を挙げた人は約半数でした。戦争は、それ自体が争点であるとともに、物価という別の争点を通じて有権者の財布に届いていたと見るのが、実態に近いでしょう。
トランプ大統領は投票日の夜、米CBSに「民主党におめでとうと言いたい」と述べ、結果は受け入れると明言しています。翌日には、戦争が敗因だったかとの問いに、ガソリンの値段を挙げて「おおむねその通りだ」と認める一方、「自分が投票用紙に載っていれば勝っていた」とも語りました。敗因を認めつつ、自らの名前だけは傷つけないという、いかにもこの大統領らしい言い回しです。
民主党の上院トップのシューマー院内総務は、大統領が民意や法を踏みにじるなら、調査し、法廷に訴え、「立法の有刺鉄線」で絡め取ると宣言しました。
ただし、ここで一つ、時間の軸を確かめておく必要があります。新しい議会が招集されるのは、年明けの2027年1月3日です。それまでの約2カ月、議会は改選前の共和党の多数のまま動き続けます。
新しい議会が戦争の権限を縛る決議や予算の締め付けに動けるのは、早くとも1月以降のことです。裏を返せば、これからの2カ月は、敗れた大統領の手が、議会からも、まだ縛られていない期間でもあります。
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