【2-5.「地理的な制限のない戦争」という宣言】
その一方で、イランの指導部は、戦いの言葉を一段引き上げています。
最高指導者モジタバ・ハメネイ師の事務所は10月31日、米国とイスラエルが軍事攻撃を再開すれば、イランは「地理的な制限を設けずに」対応するよう、ハメネイ師が軍に指示したと明らかにしました。なお、指示が出された日時は分かっていません。
革命防衛隊に近いタスニム通信は、イランが「地域の戦争」から「地理的な制限のない戦争」に正式に移ったと伝えています。アルジャジーラによれば、ハメネイ師は標的のリストを更新するよう命じたともされ、イランの当局者は、欧州の国々や湾岸の海底ケーブルも標的になり得ると示唆しています。これは示唆の段階の発言で、実際の計画があるのかどうかは確かめられていません。
これと並んで、イスラエルが米国に、イランが化学兵器の使用を検討しているとの情報を伝えたとの報道もあります。ただし、その真偽のほどは分かっていません。米国の情報機関はこれまで、イランの化学兵器について研究の段階の疑いを示すにとどめており、使える状態にあるとは確認していません。
こうした情報が、誰から、どのタイミングで、誰に向けて出されたのかは、それ自体が交渉の一部であることを忘れてはなりません。攻撃を思いとどまった大統領の背中を押したい側にとって、相手の危険を大きく見せる情報は、最も効く材料だからです。
【2-6.海の上の霧】
海の上では、今週も事実を確かめにくい事案が続きました。
英国の海事機関UKMTOによれば、11月3日、オマーンのリマの北東約26キロの海上で、タンカーの機関室に2発の飛翔体が当たりましたが、死傷者は出ていません。同じ日、ホルムズ海峡でインド人の船員が乗る木造の貨物船が攻撃を受け、船員1人が亡くなったと米CBSは伝えています。
11月4日には、革命防衛隊が、海峡の南の「禁止された航路」で機雷に触れたタンカー4隻が破壊され、別の2隻を拿捕したと主張しました。革命防衛隊は、米軍の無人機MQ-9を撃ち落としたとも主張し、これを自らの数え方で56機目としています。
5日にも、革命防衛隊は、許可のない航路を使ったタンカー2隻とタグボート1隻が海峡で炎上したと発表し、ケシュム島の近くで米軍の無人機MQ-1を破壊したと主張しました。これらの主張は確かめられておらず、互いに関連があるのかどうかも分かっていません。
前号でもお伝えしたとおり、海の上の出来事は、実際の被害よりも「被害が出るかもしれない」という予想のほうが、市場と交渉を大きく動かします。
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