【2-3.「説得力がない」と突き返したテヘラン】
では、イランの側は、この変化をどう受け止めたのでしょうか。11月3日、最高安全保障評議会のレザイ書記は、米国の回答は「説得力がない」と述べ、ホルムズ海峡を再び開くのは、米国がイランの七つの条件を「完全に、明確に」満たしたときだけだと突き放しました。
イランが掲げる条件として報じられているのは、凍結された資産の解除、米海軍による港の封鎖の解除、制裁の解除、そしてレバノンを含むすべての戦線での戦闘の停止などです。
七つの条件のすべての中身は、私が確認した範囲では公にされていません。アラグチ外相は、条件が満たされれば、海峡を2日間で開くという案を示したと伝えられています。これは、前号でお伝えした「7日間」の案から、履行の期間を大きく縮めた形です。
イラン外務省のバガイ報道官は「ボールは米国の側にある」と述べ、ガリババディ外務次官は「正当な自衛の権利を留保する」と付け加えました。一方で、ペゼシュキアン大統領は、和平の協議を進めるための権限を広げられたと語っています。
サウジアラビア系のテレビ局アルアラビーヤは、ペゼシュキアン大統領、ガリバフ国会議長、アラグチ外相という文民の指導者たちが、治安の指導部にカタールの最新の案を前に進めるよう促したと伝えました。別の報道では、レザイ書記が、ドーハに米国との直接の窓口を開くというカタールの案を退けたともされます。いずれも名前を明かさない情報源に基づく報道で、真偽のほどは確かめられてはいません。
最高指導者の事務所が強い言葉を発し、大統領が交渉の権限を口にするという二重の構造は、前号でも触れた、交渉で物事を決める複数の決定権者の存在を、改めて示すものです。誰が最後に「はい」と言えるのかが見えない相手との交渉は、いつまでも最後の一歩が遠くなります。
【2-4.仲介者の36時間】
仲介の舞台では、カタールとパキスタンの二つの国が前面に立っています。
ロイター通信などによれば、10月31日から11月1日にかけて、イランとカタールの担当者がドーハとテヘランで3日続けて協議を重ねました。カタール外務省のアンサーリ報道官は、双方とも協議に関わり続けており、カタールは提案のやり取りを「リアルタイムで」仲介していると述べています。
ロイター通信によれば、カタールの当局者は11月3日、新しい案を双方が検討しており、36時間以内に反応が返ってくる見通しだと語りました。カタールは、全面的な合意の前に「暫定の合意」を結ぶことに望みをつないでいます。
私が紛争の現場で学んだのは、こうした局面で仲介者が持つ最大の武器は、案の中身よりも「順番」だということです。海峡を開くことと封鎖を解くことは、実は表と裏の関係にあります。どちらが先に動くかという問いに答えが出ないとき、仲介者は「同時に、少しずつ」という順番を設計します。前号でお伝えしたように、カタールが「信頼を築く措置を毎日一つずつ」という形を探ってきたのも、この考え方に立つものでしょう。
ただし、イランは今、米国が急いでいることを知っています。急いでいる相手からは、一度に大きな譲歩を求めるより、小さな譲歩を一切れずつ切り取っていくほうが得だと、テヘランは計算しているはずです。
いわゆるサラミ戦術を、今度はイランが米国に対して使う番が回ってきたのかもしれません。
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