パリ多発テロ、イスラム国の「金と武器」はどこから来るのか?

 

「イスラム国」を太らせたのは誰だ!?

2010年から、「アラブの春」という革命運動が、中東、北アフリカで盛んになっていきました。2011年、その波は、シリアにも及びます。

シリアで内戦がはじまった。この時、シリアに海軍基地をもつロシアと、イランアサド現政権を支持しました(いまもしています)。

一方、欧米は、逆に「反アサド派」(イスラム国も含む)を支持しました。支持しただけでなく、「支援」したのですね。金と武器

この勢力図ですが、もう少し詳しくみてみましょう。「イスラム国」について読んだ本の中で、もっとも詳しかったのは、こちら。

●「イスラーム国」 アブドルバーリ・アトワーン著 (集英社インターナショナル)

この本(202p)によると、「反アサド派」を支援した国は11か国。すなわち、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、トルコ、サウジアラビア、ヨルダン、エジプト、アラブ首長国連邦、カタール。欧米以外は、「スンニ派イスラム教」の国々です。

アサドを支援するイランは、「シーア派」。シリアは、「スンニ派多数」ですが、アサド自身は「シーア派」の一派とされる「アラウィー派」。つまり、「スンニ派」と「シーア派」の対立も深くかかわっているのですね。

この本によると、「反アサド派」をもっとも多く支援したのは、「サウジアラビア」「カタール」となっています。

サウディアラビアとカタールが革命勢力に資金、武器支援を行った。

 

「ニューヨーク・タイムス」は、2012年1月、カタールが武器を貨物機に載せてトルコに運び、革命勢力に供与していたと報じた。

 

サウディアラビアも軍用機でミサイルや迫撃砲、機関銃、自動小銃をヨルダン、トルコに運び、シリア国内に送り込んでいた。

 

非公式の情報に基づけば、サウディアラビアは50億USドル(約6,150億円)を、武器支援などのシリア反体制派支援にに費やしたという。  (203~204p)

これは、アメリカの支持、あるいは黙認のもとで行われたことでしょう。こうして、当時欧米+スンニ派諸国が支持、支援する「反アサド派」に属していた「イスラム国」は、強力になっていったのです。

普通の人たちは、こういう背景を知らないので、「なんかイスラム国って突然出てきて、あっという間にイラクとシリアの広大な地域を支配して。いったいなんなんだ????」と不思議に思うのです。

さて、2013年9月、アメリカは、「シリア・アサド政権攻撃」を中止。「化学兵器破棄」を条件に、アサド政権の延命に同意します。さらに、オバマは宿敵イランとの和解に動き、2015年7月の「核合意」にむかっていった。

サウジアラビアは、アメリカの変節に激怒。両国の関係は、悪化しました。そして、シリア、イランとの和解は、アメリカ、イスラエル関係にも深刻な打撃を与えています。

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