つけ焼き刃の練習は効かない。小学校「お受験」面接の知られざる実態

 

幼稚舎の徳育の根本は、独立自尊の精神にあります。その規範となるものが、「幼稚舎修身要領」(10か条)です。これは通信簿の第1ページにも記してあります。成績よりも前に目を通してほしい大切な事項だという意味です。新1年生になった時に3つの約束をしますが、「幼稚舎修身要領」の中から特に大切なものを取り上げたものです。

1つ、うそをつかない。
2つ、お父さん、お母さん、先生のいいつけを守る。
3つ、自分でできることは自分でする。

これは福沢諭吉の精神を表した「幼稚舎修身要領」(10ヶ条)の中から、特に大切な項目を選んだものです。(「子どもと向かい合う教育」 元慶應義塾幼稚舎長 川崎悟郎 著 リヨン社 刊)

普段、子どもにいって聞かせていることを考えると、

「うそをついてはいけません!」
「約束は、守りなさい!」
「自分でできることは自分でしなさい、お母さんを頼っても知りませんよ!」

だとします。

これを破ると、叱り、諭しているとします。そうであれば、お母さんの育児の姿勢と幼稚舎の教育方針は、一致していることになります。

そして、共学が自然だと思っているとします。宗教教育は、両親共に経験がないので、なじめないものがあると考えていたとします。大学まであって、受験戦争に参加しなくて済みますし、学部がたくさんありますから、将来、目指す道が広いのも魅力だと思っているとします。通学に約1時間、しかし、体力、気力ともに心配ないとしましょう。

たくさんお金はかかりますが、頼れる祖父母が健在です。冗談、冗談です。幼児には、「シックス ポケット」があるといわれています。両親には、祖父母が二人ずついて、教育資金となるポケットが6つあるということです。こういう図式ができていれば、面接があったとしても、幼稚舎を選んだ理由を、きちんと胸を張って説明できます。これが、面接の目的です。

幼稚舎の他にも、面接を実施していないのは、桐朋小学校、桐朋学園小学校で、その理由ですが、以前にも紹介しました、桐朋学園小学校の鈴村元校長の話を思い出してください。文言は正確ではありませんが、次のような内容でした。

「大人は、趣味を尋ねられると、本当は、競馬、競輪などの博打が大好きでも、『趣味は、読書と音楽鑑賞です』と平気でいうものです。演技もできます。ですから、やっても無駄なのです。本音をおっしゃいませんから。しかし、子どもを2日間預からせてもらうと、子どもは正直ですから、みんな本当の姿を見せてくれます。育てられている環境は、わかります。ですから、私どもでは、面接をしないのです」(注 桐朋学園小学校のテストは2日間)

その通りではないでしょうか。大人は、猫をかぶりますから、面接は、ニャーニャー大会かもしれません。子どもは正直で、演技をしませんから、育てられている環境を、そのまま見せてくれます。ですから、面接で、つけ焼刃は効かないのです。

また、慶應義塾幼稚舎では、紋切り型のステレオタイプ的な回答が増え、面接をやる意味がないと考え、廃止したと伺ったことがあります。

なお、国立附属小学校では、お茶の水女子大学付属小学校、学芸大学付属竹早小学校(子供のみ)、埼玉大学教育学部附属小学校以外は面接をやっていません。(平成26年12月実施のもので、今年のものではありません)

面接では、付け焼刃は効かないとお話ししましたが、入学試験そのものも、メッキでは駄目なのです。メッキははげるものです。以前、紹介しました、あるミッション系の校長先生の言葉を思い出してください。

「入学試験に必要な知識や礼儀作法なるものを、泥縄式に詰め込み、『受験準備、事足れり』とお考えでしたら、それは誤りであることに気づいてほしい」

繰り返しますが、その通りではないでしょうか。赤ちゃんを育てたとき、あれこれと泥縄式に詰め込みましたか、お母さん。そんなばかげたことは、しなかったはずです。子どもの成長に合わせ、一歩一歩、ゆっくりと、一緒に、階段をのぼってきたのではありませんか。その心は、「できるまで待ってあげよう忍の一字」ではなかったでしょうか。小学校は、無理やり受験戦士に育てられた子を望んでいません。

子どもの知育は、子ども自身が、「知りたい、識りたい」と、身体、全体から、ふつふつと湧き出るときに、与えるものであることが大切なのです。モンテッソーリの「その時期に最も活動が盛んになり成長する敏感期」です。お子さんの成長を見極め、学習するためにふさわしい環境を作ってあげるのが、親の役目です。主導権は子ども自身にありです。それを、親が握り締めていないでしょうか。勉強だけではなく、遊びまでもです。

やはり、親は、教育に関して信念というか哲学を持つべきだと思います。しかし、これを言うのには、勇気が必要です。小学校の受験にしても早期教育にしても、私たち親は、子どものためによかれと思って始めますから、「そんなことは、余計なお世話だ!」となりがちです。

そこで、来年1月から、国立、私立小学校の入試問題を紹介し、就学前に何が必要なのかをお話ししましょう。誤った受験準備をしないことが、お子さんのためだからです。

(面接に関する情報は平成27年12月現在のものです)

(次回は、「よくある質問」についてお答えしましょう)

image by: Shutterstock

 

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