歴史的視点で2015年を見ると
ここまで、ほぼ時系列で今年の動きを見てきました。今度は、「歴史的視点」で「解釈」してみましょう。
08年、アメリカの一極時代は終わりました。その後は、アメリカと中国、二極時代になっています。そしてその他の国々は、「どっちにつくのがお得かな?」と考えている。
アメリカ・オバマ政権は、ここ数年間、その資源を非常に「非効率的」に使っていました。
2013年、アメリカはシリア・アサド政権を敵視し、戦争一歩手前までいった。
2013年末~14年初、中国のプロパガンダに乗せられ、安倍総理の「靖国参拝」に過剰反応、バッシングしていた。
2014年3月から、「クリミア問題」でロシアをバッシングしていた。
2014年8月から、IS空爆をつづけている。
シリア、日本、ロシア、ISバッシング。
これは、アメリカの国益とほとんど関係がなく、「パワーの無駄使い」といえます。シリアにアサド政権があると、アメリカは何か困るのでしょうか(実際に困っているのは、たとえばイスラエル)? 安倍総理が靖国に参拝したら、アメリカは困るのでしょうか? クリミアがウクライナ領か、ロシア領かで、アメリカに何か影響があるのでしょうか? ISは、確かにテロを起こすので問題ですが、空爆するより国内を固めた方が効率的なのではないでしょうか?
しかし、「AIIB事件」で、ようやくオバマさんも「真の脅威の存在」に気がついたのでしょう。アメリカは、ようやく本来の「リアリズム」にもとづいた外交に戻りつつあります。
アメリカには、「3つの問題地域」がある。すなわち、
1.欧州、具体的にはウクライナーロシア問題。
2.中東、具体的には、シリア、IS問題。
3.アジア、具体的には中国、南シナ海問題。
しかし、2015年、1.のウクライナ問題は、事実上消滅しました。2.のシリア、IS国問題、アメリカは関与を減らしています。そもそも、シェール革命で世界一の産油、産ガス国になったアメリカ。中東に対する興味を失いつつあるのです。
そして、すべての資源を、3.の中国問題に集中させつつあります。アメリカは今年、「資源を正しく使い始めた」のです。
一方、ライバル中国は今年、2回大きな勝利をしました。1つは、「AIIB」。もう1つは、IMFが人民元を「SDR構成通貨」に採用したこと。
この2つは、文句なしで「中国の勝利」です。しかし、同時に中国経済は、ボロボロになってきている。中国に関しては、パワーの増大と喪失が、パラレルで起こっています。これは、しょっちゅう書いていますが、「成長期後期」の典型的特徴なのです。
まとめてみましょう。
2015年、
1.ウクライナ問題は事実上消滅した。
2.アメリカは、ロシアと和解しはじめた。
3.アメリカは、中東への関与を減らし始めた。
4.アメリカは、中国打倒を目指し始めた。
こんな感じでしょうか。
一言で、「2015年は、歴史的視点でみるとどんな年ですか?」と聞かれれば、私は、「アメリカが、中国打倒を決意した年である」と答えるでしょう。
こういう状況で日本は?
長くなりましたので、次号で考えてみましょう。
image by: Orlok / Shutterstock.com
著者/北野幸伯
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