失敗だらけの日本外交、歴史修正主義者というレッテルはどう貼られたのか?

 

過去の外交施策に対し、総括も反省もしない日本

安倍首相は国会で、米国の公立高校向けの世界史教科書が、慰安婦について書いている嘘八百の内容に、「本当に愕然とした」と述べた。しかし、この問題についても、南京事件についても、日本の外交は「反論したら余計刺激になる」という理由で、まともに反論してこなかったのである。

その結果、米国では議会の決議や議会調査局の公式な文書で、韓国のウソ宣伝がすでに事実として確定してしまっている。安倍総理自身が何を言っても、やっぱり「歴史修正主義者」だという逆の証明に使われてしまうことになる。

それほどの事態だということに、総理はやっと気づき始めたのかもしれない。

直近の自称「イスラム国」による日本人拉致殺害も、総理の認識を覚醒させた可能性がある。国会答弁などでは決して認めないが、1月の中東訪問でマズイことをしたという自覚がなかったらおかしい。

日本人2人が人質になっているから総理の言動に制約がかかるかどうか、ということではない。専門家として見る限り、イスラエルの国旗の前で「イスラエルとの友好」を宣言したことと、ナチス犠牲者慰霊のホロコースト記念館で、ユダヤ教の丸い帽子キッパをかぶって礼拝したことの2つが、外交上の大失敗だった。

これではアラブの側から見れば、穏健派・過激派の区別なく、「日本はイスラエルの側についたな」という印象を受けてしまうだろう。それほど、決定的な演出だったと言える。外務省が推奨したのか、はたまた逆に、止めたのに総理が押し切ったのか。

日本にとって外交上重要なのは、米国を動かすユダヤ系指導層である。必ずしもイスラエルの政治的利害と一致するものではない。安倍総理は、やらずもがなの過剰パフォーマンスをやってしまったと後悔しているだろう。

以上に指摘した失敗は、ほんの一部である。ほかにも多年多額のODAを供与した相手国の大半が、日本の国連常任理事国入りを支持しなかったなど、重要な失敗例があるが、いわゆる総括はおろか反省の弁も聞いたことがない。

わずかに、本省の訓令に背いてユダヤ人6000人を救った「日本のシンドラー」、杉原千畝氏が戦後55年を経た2000年になって、ようやく「公式」に名誉回復となった例があるのみだ。

>>次ページ 米国が着々と構築する「安倍包囲網」

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