葬儀の忌み言葉
お悔やみの場面で用いる言葉にも忌み言葉があります。
結婚のお祝い言葉の時と同様に繰り返すことを連想させる「重ね言葉」は、お悔やみの場では不幸が重なるとして、用いないように気を付けましょう。
▼不幸の繰り返しを連想させる言葉
たびたび、重ねる、重ね重ね、返す返す、再び、再度、再三 など
×故人にはたびたびお世話になりました。
↓
○故人には大変お世話になりました。
故人にはとてもお世話になりました。
×返す返すも残念です。
↓
○本当に残念です。
残念で仕方ありません。
×皆々様に見送られ
↓
○多くの皆様に見送られ
「死ぬ」とか「死亡」といった直接的に死を表す言葉も、下記のような別の言葉に置き換えて使います。
死ぬ、死亡 → 逝去、他界、永眠、旅立つ
急死 → 急逝、突然のこと
反対に、亡くなる前を指す「生きている頃」「生きていた頃」という言い回しも、「ご生前」「お元気な頃」と言い換え・書き換えるようにします。
数字の「四」は死、「九」は苦を連想させるため、使うのを控えましょう。
入学・入社の忌み言葉
春になると入学や入社のお祝いをメールや手紙で伝えることも増えてきます。
入学、入社までに紆余曲折があったとしても、誰もが晴れやかな気持ちで新生活を迎えたいはず。希望や期待に水を差さぬよう、祝う側も言葉には気を付けましょう。
入学・入社のお祝いの言葉にも用いるのを避けた方がよい忌み言葉があります。
▼入学や就職のお祝いにふさわしくない忌み言葉
終わる、落ちる、すべる、散る、取り消す、変更、やめる、つぶれる、倒れる、消える
×もう高校生活も終わりですね。
↓
○これから始まる学生生活が楽しみですね。
×初出社は無事に終わりましたか?
↓
○初出社はいかがでしたか?
知っている人が不合格だったり、不採用だったりということを人づてに聞くようなこともあります。無責任に噂を広げたり、わざわざ話題にするのは慎みましょう。
忌み言葉の「去る」
お祝いや悲しみの場面で使うのを避けたい「忌み言葉」とその言い換えを紹介してきました。
婚礼や葬儀で避けたい忌み言葉のひとつに、「去る」があります。そこから離れて行くという意味が、「失う」「滅びる」ことに通じるためです。年賀状でも前年のことを「旧年中は」「昨年も」と書くのも「去年」という言葉を避けるためです。
今年の干支の「さる」を俗語で「えてこう」と言うのは、さるの呼び名が「去る」に通じるので、「得意なこと」「手に入れる」という意の「得手」に言い換えたという説も。地方によっては「山の人」と呼ぶところもあるようです。
言葉にも魂が宿る。
不吉な予感や不幸を連想させる言葉は、それが現実の災いとなってはいけないので、不用意に使うのは避けましょう、というのが忌み言葉の考えです。
「使ってはならない」ことに縛られるのではなく、相手が読んだり聞いたりしたときに嫌な気持ちにならないように、他の言葉や表現に置き換える。それが人を気遣う思いやりの表れであり、言葉を重んじる日本人の知恵だったのではないでしょうか。
忌み言葉には直接関係ないのですが関連するマメ知識を1つご紹介。
年賀状の文言に句読点を付けないのは、新たな年の始まりのあいさつに「区切り」を付けないために句読点を使わないのだとか。
これも一種の縁起かつぎなのかもしれませんね。
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『仕事美人のメール作法』
著者/神垣あゆみ
広島を拠点に活動するフリーランスのライター。若手ビジネスマン向けにメールマナーの基本を解説した『メールは1分で返しなさい!』(フォレスト出版)など著作多数。
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