30年ぶりのヒャッハー! 『マッドマックス』最新作を観る前に旧3部作の徹底レビュー

 

目の肥えたプロレス好きをワクワクさせた3作目

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小川:『マッドマックス サンダードーム』に至ってはもう別映画のような……。文明が崩壊した世界観だけ『2』と共通だけど、いきなり物々交換のバータータウンだもん。それになんで、ティナ・ターナーを起用したんだろ?

原口:それは、3作目で初めてハリウッド資本が入ったから。

KANTO:やっぱり、アメリカでヒットしないと監督も俳優も未来が無いからでしょうね。当時のティナ・ターナーの人気は凄かったし、アメリカ人の彼女を起用すれば、ついでにテーマ曲も歌ってもらえるという単純な理由だと思います。

小川:あのテーマ曲はなんとなく覚えてた。

KANTO:で、実際あの映画のテーマ曲は大ヒットしてましたからね。だからこれは傑作だったかもと思って、今回観直したら違ってた(笑)。

小川:ウォルター・ヒルの70年代の映画で『ストリート・ファイター』(1975年の作品・ゲームに非ず)っていうのがあって、それの『マッドマックス』風味のような気がしました。

KANTO:それは未見だけど、今回はストーリーを重視した上に、裏テーマみたいなモノも埋め込んだら、単純に小難しいだけの冗長な凡作になっちゃったって感じです。アクションも少なくなって、本来の魅力が薄まってしまってね。

原口:当時、マッドマックスを二人三脚で作ってきたプロデューサーのバイロン・ケネディが急逝して、傷心の中で製作した映画だからミラー監督のテンションもかなり下がっていたらしいですよ。アクション以外のシーンをジョージ・オギルヴィー監督に任せたくらいで。本来このシリーズってカーアクション、壮絶なクラッシュシーンが凄くて、観客もそれを期待する人が多かったと思うんだけどね。そんな中、『3』では終盤くらいしか疾走感あるアクションが無かったから、当時ガッカリ感がありましたな。

小川:あ、やっぱりそうでしたか。

原口:そんな『サンダードーム』をダメって人は多いかも知れないけど、前半のサンダードームでのタイマン決闘シーンは、プロレス好きとしてはけっこうワクワクさせるものがありましたよ。WWEのレスラー、ケインとケージ・マッチで戦うような感じで。

小川:あのケージ・マッチがまさしく『ストリート・ファイター』なんですよね。それをサンダードームと言ったジョージ・ミラーのセンスはありますね。

KANTO:でも、予算が大きいから、より一層北斗の拳の影響力は強まってますね。あと、さっきも言った『ウォーター・ワールド』への影響も。もっと言えば、ジョージ・ミラー監督が作り上げた近未来世界は、3作目で完成されましたね。これ以降、核戦争後やデストピアを描いた作品は少なからずも『マッドマックス』の世界観を参考にしていると思う。そういう意味では、原点なのかもね。

原口:原点といえば、『サンダードーム』では室内での豚の飼育シーンが出てくるけど、後にジョージ・ミラー監督があの名作アニマル映画『ベイブ』シリーズを製作したことを考えると、ある意味豚へのこだわりの原点が垣間見られてニヤリとする。いや、おれ『ベイブ』シリーズ大好きなので。

小川:そこですか!

KANTO:あー、『ベイブ』ありましたね。

原口:あとシリーズを通したことで言うと、子供というか子役の使い方が上手いなと思ったね。ああいう荒廃した世界の中に、屈強な荒くれ者ばかりでなくピュアな象徴ともいえる子供が存在するというのが、世界の無常さを際立たせてインパクトが強まるというか。あと、犬や猿とかの動物もいい場面で使ってますな。やはりこれも後に『ベイブ』シリーズを作るミラー監督のバランス感覚なのかなと。

KANTO:とことん動物好きだから、『ベイブ』の話が舞い込んで来たのかもね。

原口:いやいやミラー自身のプロデュースだから自分から動物映画がやりたかったんですよ。ちなみに『ベイブ』の後には『ハッピー フィート』というペンギンアニメも製作・監督してヒットさせているのも見逃せない。R指定バイオレンスもファミリー映画もどっちも作るっていう振り幅の大きさでいえば、ロバート・ロドリゲス監督もそんな感じですが。

小川:なるほど、『マリアッチ』3部作と『スパイ・キッズ』を作るロバート・ロドリゲスにたしかにかぶりますね。

>>次ページ で、最新作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』はどうなの?

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