報復シーンが秀逸すぎる1作目
原口:ここで、未見の人のために『マッドマックス』1作目がどんな話か説明を。
小川:ハイ。まず、『マッドマックス』は、近未来の荒野での暴走と暴力にまみれた凶悪な暴走族と暴走族専用の特殊警察の戦いの話で、メル・ギブソン演じる特殊警察のマックスは凶悪な暴走族のナイト・ライダーやトーカッターとシ烈な爆走バトルを繰り広げ、お互いに復讐を繰り返す、というのが、主な展開かな。
原口:『2』からは荒野を流離(さすら)うマックスのヒーロー映画になっていくんだけど、1作目は近未来ながらまだ現代の映画っぽい、シンプルな復讐譚だよね。家族愛要素や奥さんのジェシーとのロマンス要素も強くて、アクションやバイオレンス面を期待すると、今の目ではちょっと物足りないかも。
小川:今改めて『1』を見直すと、オーストラリアの田舎の暴走族って感じがしますね。『荒野の千鳥足』とかオーストラリアの田舎臭さ、というかバズ・ラーマン監督の初期の作品『ダンサー』のような洗練されてなさというかね。こちらはフィンランドのバイカー映画『アイアン・カウボーイズ・ミーツ・ゴーストライダー』を思い出しました。
原口:どこまでも地平線が続いて、見渡す限り何も無いあのオーストラリアの風景って当時にしては独特で、インパクトありましたね。普通はどこかに山があったり看板とかもあったりするだろうけど。
小川:そのどこまでも地平線が続く殺風景が今にして思うと実はオーストラリア映画の良さなんですよね。繰り返しますが『荒野の千鳥足』しかり。
原口:『荒野の千鳥足』って例えで言われても、去年初めてミニシアターでやった映画だからほとんどの人が観てないよ!!
小川:ま、そうですけどね。
KANTO:今回、最新作の公開で、それこそ30年ぶりに1作目を観たんだけど、ぶっちゃけ小学生の時分よりも衝撃が大きかったですよ。確かにストーリーは全くお粗末なんだけど、ジョージ・ミラー監督のマッスルカーや大型バイクへの愛情は、全く風化していなかった。クルマ映画の歴史では、『バニシング・ポイント』や『イージー・ライダー』を代表するアメリカ・ニューシネマ時代が終焉してから、遅ればせながらオーストラリアならではの広大な敷地で、車やバイクをかっ飛ばすだけのカーアクション映画。これだけで、しっかり映画史に残っている訳だから、ヤッパリ凄いなと思う。
小川:あ、そうか。暴走族とは違うけど、アメリカン・ニュー・シネマには『バニシング・ポイント』がありましたね。
原口:低予算でも、香港映画は格闘、カンフーで無茶をやっていたけど、オーストラリア映画はカースタントで無茶をやるという風潮があったようですね。今見ても、トラックにバイクが正面衝突するシーンとか衝撃的だもん。車の壊れ方とか、ブチ当たり方がすごい。
KANTO:個人的には、ラストシーンの無慈悲な世界観が最高です。ここだけは、小学生の頃から感想が変わってなかったよ。
原口:ああ、ネタバレになるから詳しく言えないけど、あの報復シーンは鮮明に覚えてますよ。あのシーンがあるからある意味カルト映画になっているというか。