30年ぶりのヒャッハー! 『マッドマックス』最新作を観る前に旧3部作の徹底レビュー

 

『マッドマックス』=『マッドマックス2』だ!

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小川:で、『2』に行きますが、ボクの中での『マッドマックス』は『マッドマックス2 ザ・ロード・ウォリアー』でしたね。『1』も2、3回見てるけど、『マッドマックス2』は何度も見ていて、ボクの中ではあれが『1』、というか『マッドマックス』=『マッドマックス2』だった、ことを思い知らされましたね!

原口:まあ、今やほとんどの人がそう認識してるんじゃないですか。シリーズものにしては珍しく、『2』のほうが名作というパターン。テーマを一新して、全く見たことのない世界観を構築したのがすごかった。

KANTO:2作目は、映画製作がようやく分かってきたジョージ・ミラーの力作ですね。確かに、あの独特な世界観は異様なモノがある。でも、傑作の呼び声高い2作目も脚本はヤッパリお粗末。ただ、そこを誰も求めていない。前作同様に、カワサキやホンダのバイクが大量に出てきて暴走してるだけで、ウズウズします。近未来SF映画なのに特撮シーンは一切無くて、全部実写って所もポイントだね。

原口:そうね、特撮がないからちっともSFって感じはしない。でもファッションや風景が独特だからしっかり異世界感はある。

小川:『2』を簡単に紹介しますと、一応、時代設定は『1』の後なんですけど、2つの大国間で勃発した世界大戦により文明が崩壊した世界で石油を略奪する凶悪な暴走族がのさばっていて、そこで主人公のマックスが暴走族に度々襲撃を受けている石油精製所から石油を運び出すトレーラーを探して、精製所の人達と「太陽の楽園」を目指すけど、ヒューマンガス率いる暴走族と壮絶なバトルを繰り広げる、という感じでしょうかね。

KANTO:実は2作目は多分3本立ての名画座で、公開した翌年くらいに観たハズなんだけど、ほとんど憶えていなかった。ただし、悪役のボス、ヒューマンガスの格好と名前だけは強烈に憶えている。「北斗の拳」への影響は今考えると分かりやすいけど、当時は全然思いもつかなかった。むしろ、同じ実写映画と言うことでは、『ウォーター・ワールド』の方がピンと来た。なんせ、今でもユニバーサル・スタジオの人気ショーだからね。ちなみに、『ウォーター・ワールド』もストーリーがまるでダメなトンデモ映画なんだけど。

小川:『マッドマックス2』の世界観って映画だけに留まらなかったことが大きいですよね。例えば、一番現れているのは80年代少年ジャンプ黄金期を支えた「北斗の拳」。プロレス界で言えば歴史に残るタッグチーム「ザ・ロード・ウォリアーズ」、そしてHM/HR界のメタル・ゴッド「ジューダス・プリースト」。彼らに与えた疾走と暴力のイメージの原点は『マッドマックス2』と見ましたね!

原口:そうだよ!! いま簡単にキーワードを語り捨てちゃっているけど、後の様々なカルチャーへの影響を考えたなら、この『2』の存在感、歴史的意義はすごい。そこはしっかり言っておきたいね。ジャンプ世代なら「北斗の拳」のマンガやアニメにはみんな熱狂したと思うけど、『マッドマックス』シリーズが無かったら「北斗の拳」のあの世界観は無かったんだよ!?

小川:世界大戦で文明が滅亡し、凶悪な暴走族がのさばる辺りなんかまんまでよね。

原口:悪役のキャラなんかけっこう映画に出てくるそのまんまの姿だったりするしね。

小川:「北斗の拳」の初期に出てきたスペードなんかまんまベアクロウ・モホークだし、子供が投げるブーメランなんかもね。

原口:『マッドマックス』が無かったら、もっと香港映画っぽい世界観の北斗神拳になっていたかも。そしてプロレス界で一世を風靡した「ザ・ロード・ウォリアーズ」のキャラクターも無かったわけで。ザ・ロード・ウォリアーズってチーム名も、映画の原題の『Mad Max 2: The Road Warrior』からパクっているわけだから。この事実凄くないか?

小川:確かに。暴走戦士だし、ウォリアーズってモヒカンだもんね。

KANTO:そんな『マッドマックス2』は、ジョン・フォードの『駅馬車』と黒澤明の『七人の侍』の影響を色濃く受けてるね。乾いた世界の無慈悲で粗暴な男たちは、戦国時代の野武士だよ。

小川:ああ、『駅馬車』のインディアンを凶悪な暴走族に置き換えればそうだし、石油精製所の人達がマックスにお願いするくだりや守りの集落は『七人の侍』ですね。

原口:たしかにいろんな名作を参考にして娯楽性を追及した感はありますね。とにかく公開された81年当時、『マッドマックス2』の提示した世界観の衝撃は凄かった。このマッドマックスワールドに影響を受けた近未来バイオレンス映画もたくさん作られたし。

小川:これに対して『1』と『3』はやはりどうしても好きになれない。

KANTO:好き嫌いの話はともかく。『マッドマックス』は何が凄いかって、あの内容では考えられないくらいに低予算映画だったこと。同じ低予算のクルマ暴走映画と言えば、ロジャー・コーマン大先生の『デスレース2000』があるけど、あっちはホントもう全体的にチャチい。それに比べると、インターセプターやカワサキの大型バイクが暴走する『マッドマックス』はちっともチャチくない。もちろん、その10倍の予算で作られた2作目の方が洗練されてるけどね。聞いた話だと、『ブレアウィッチ・プロジェクト』が出るまで、製作費と収益額の差が最も大きい映画だったそうですよ。

>>次ページ 初めてハリウッド資本が入った3作目はどうなった?

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