【書評】そもそもボクはやってない。人気作家が暴露する警察の茶番

 

日本警察の比類なき不条理劇の開幕である。刑事は最初から被疑者の言うことをまともに聞く気はない。警察や検察は、あらかじめ調書の筋書きを念頭に置きながら取り調べを行う。日本の刑事裁判では警察や検察が作成する供述調書がきわめて大きな力を持っているからだ。

警察の取り調べとは、当事者から事実関係を聞き出して捜査の参考にするのではなく、もっぱら用意された筋書きにあてはまることを被疑者に言わせ、それを自白として記録することをいう。それ以外の言動は事件と関係ないとして黙殺される。こちらがどれだけ事情を話そうとも、聞き流すか、先に手続だけ進めようと相手にしてくれないのだ。

税金で雇われたシナリオライターたる警察・検察の文章能力、あるいは全国の司法関係者が膨大な時間と税金を費やして培った文章作成のための技術は、作家である私をして驚嘆せしめるレベルなのです。

「冲方丁が妻へのDV容疑で逮捕された」というニュースは週明けに一斉に報道された。刑事が冲方を取り調べている間に、この一件を大々的に世間に流布させるべく副署長がマスコミにリークしていた。冲方を逮捕した渋谷署の面々からすると、冲方という被疑者は「手柄」をアピールするための絶好の獲物だった。署内の官たちは欣喜雀躍していたようだ。

しかし、とんでもない人物を逮捕してしまったものだ。

不条理で一方的な警察の態度に、冲方は激しい怒りを募らせ、結果的にはそれが「こうなったらとことん自分の言い分を主張してやるぞと奮い立たせてしまったのだ。「素直に認めればすぐに家に帰れるんだぞ」という恫喝を含んだ向こうなりの駆け引きに断固、応じなかった。

あとから弁護士に「供述調書には拇印を押さないで」といわれ後悔した。調書は基本的に警察にとって都合のいいことしか書いてない。たとえこちらの主張通りの調書であるように見えても、裁判になったとき、確実にこちらが有罪になるような「何か」が記されているはずだからだ。ここ重要です。大切なことを教わりました。

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