【書評】そもそもボクはやってない。人気作家が暴露する警察の茶番

 

本当に罪を犯していない人々がポキリと心を折られる仕打ちが必ずある。高圧的な態度はずっと続く。逮捕された被疑者の拘束時間は最長72時間、その間にできるだけ被疑者を締め上げ、精神を圧迫し、なんとしてでも罪を認めさせようと躍起になる。被疑者をいじめ抜き、精神的に追い込んでいるという自覚は警察側にもある。

被疑者にとって最悪のシナリオは、拷問のような留置所の環境に音を上げ、犯してもいない罪を認めてしまったうえに、金銭を支払わなければならなくなり、さらには社会的に汚名をこうむり、その後も長い間、経済力を失ったまま生活せねばならなくなることです。

再び言うが、警察はとんでもない人物を逮捕してしまったものだ。善良な市民に知って欲しくない、司法の実態が暴かれてしまったのだ。この本は「いざというときのための留置所マニュアル」として非常に有効である。時系列に沿った記述が非常に実用的だ。留置所は誰でもが入る可能性がある場所である。まさに全国民の座右の書だ(笑)。

司法組織に属する「公僕」たちは、苛烈な階級社会の出世競争ストレスを国民にぶつけてくる。そして、硬直した司法組織をよしとし、あるいは無知なまま自分とは縁のない世界だと思い込んでいて、「逮捕されるような悪人はひどい目に遭え」という短絡的な考えを疑わない大多数のわれわれ国民がいる

さらにその思念を増幅させて派手に演出し、自分たちは正義であって悪はいじめ倒すべきだと思うよう仕向けるマスコミやエンタメの数々。こんな現状をどうしたらいいのか。

日本の司法がなかなか近代化できないのは、いまの司法制度を無意識に尊重し変えてはいけないといったシンプルな心理に支配された人々(=我々の大多数の存在があるからだ、というのが今回の一件で様々な人から学んだ筆者の実感であった。

じゃあどうすればいいのか。この本では「大いに笑い倒してやれ」という結論になっているが、なんだかなーという気もするんだよなー。そもそも何の訴えだったか、当事者がわからないという意外な展開もなんだかなー。

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