【書評】いじめも出自も嘘。「異常な親」がでっち上げた殺人教師

 

2006年7月28日一審判決、体罰やいじめを一定程度認定するものの、ほかのモンペ側の主張はことごとく退けられた。理由は「原告らの供述には信用性がない」の一語に尽きた。なぜ一部の体罰やいじめが認められたのか。被告側である福岡市が教師の体罰やいじめを認定し、停職6か月の戒告処分を行っている。福岡市の認定に裁判官は踏み込まずに無難なところで決着したのだ。筆者は一連の騒ぎの火付け役、朝日の市川記者(取材のやりとりについて答えただけでそれ以外の質問は一切受け付けなかった)をはじめ、文春の西岡記者、西日本、毎日の記者にも取材するが、彼らがどれだけの聞き込みをしたかは疑問だという。

一通りのことをやっていれば、問題の一家の良くない評判が保護者の間に広まっていた以上、いやでも耳に入ったはずであり、少なくともあのような一方的な報道にならないはずある。「子供は善、教師は悪という単純な二元論的思考に凝り固まった人権派弁護士、保護者の無理難題を拒否できない学校現場や教育委員会、軽い体罰でもすぐに騒いで教師を悪者にするマスコミ、弁護士の話を鵜呑みにして、かわいそうな被害者を救うヒロイズムに酔った精神科医。そして、クレーマーと化した保護者。彼らが寄ってたかって川上(教師)を『史上最悪の殺人教師にでっちあげたというのが真相であろう」と福田は断じる。

この事件は松本サリン事件と同じで、過熱報道が招いた冤罪事件である。川上は筆者の「やってもいないことをなぜやったと認めたのか」に対し「保護者と教師は同等じゃないですよ。教師の方がなにごとも一歩下がって対処しないとうまくいかないんですよ」とつぶやく。「子供という聖域」を盾に理不尽な要求をする保護者が増え、教師がますます物が言えなくなる状況が続くとどうなるか。それにしてもこのモンペ(という表現はこの本にはないが)、でっちあげの本当の目的はなんだったのだろう。明らかにウソとわかる出自を主張し、それで墓穴を掘っている。理解しがたい人間たちだ。ホラーだ……。

● 『でっちあげ』事件、その後』(新潮社サイト)

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

 

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