世界的プログラマーが持論、日本の長時間労働と国家主義の深い関係

 

米国は、日本が太平洋戦争を起こした原因の根底には、国を個人よりも上位に置いた「国家主義」にあり、それが、アジアの人々だけでなく、日本人までも大いに苦しめることになった、太平洋戦争を引き起こした、と解釈したのです。

そのため、国は国民のために存在するものであり、政治家は国民からその運営を委託されただけの存在であり、必要以上の権力を与えることは好ましくない、という哲学が反映されたのが、現在の日本国憲法なのです。

最近、話題に上ることの多い「教育勅語」が、一度は国会で「憲法と矛盾する」と日本の教育から排除することが決められたのも、「教育勅語」が、家族や国を個人よりも上に置く戦前の国家主義そのものであるからです。

幼稚園生に「教育勅語」を捧唱させることは、そこに含まれた国家主義的な哲学を子供達に植え付ける行動に他ならず、そこに多くの人が違和感を持つのは当然なのです。小さい子供達に、この手のものを捧唱させるということは、「自分で余計なことを考えるな。日本人なりの価値観は、この言葉から学べ」という強いメッセージなのです。

稲田防衛大臣が、「私の考え方のベースになっている」と言ってはばからない、谷口雅春氏の書いた「生命の実相」は、戦前の国家主義、そして戦後の日本会議を中心とした保守運動のバイブルなのです。

安倍首相が、彼自身の「ライフワーク」と捉えている憲法改正を強く後ろから押しているのも日本会議であり、自民党の改憲案から「個人という言葉が消え、「国益や国家の秩序が人権よりも優先されるように書かれている背景には、この「生命の実相」に書かれた国家主義的な哲学があるのです。

日本兵の多くは、十分な補給も弾薬も戦略もないまま戦地に送られ、無駄に命を落としましたが、それと、現代の生産性を考慮しない長時間労働は、根っこは同じところにあるのです。

そんな目で、自民党の改憲案を読んでいただければ、これがいかに時代に逆行することであるか、私たちの子孫を苦しめることになるか、を理解していただけると思います。

image by: Shutterstock

 

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マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

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