なぜNY在住の日本人社長は真っ白なDVDを見て身を乗り出したのか

 

でも、そうやって出会った作品は忘れられないよ。 その感動は無駄な99本を忘れさせます。

例えば、名作、といわれる作品。「ローマの休日」しかり、「風と共に去りぬ」しかり、「七人の侍」しかり。もう誰もがいい作品と認める、名作中の名作

でも、これを未見の人が今から観るということは、前述の理屈だと「絶対いい作品」「間違いないクオリティーの作品」だということを知った上で観る、ということになります。

それって、つまりは、お見合い結婚だよね?(いえ、決してお見合い結婚が悪いってわけではなく、、)

相手の顔写真も、年齢も、家柄も、職業も、なんなら年収までわかった上で、会う。(いや、それが悪いってわけではなくて、、、)

ローマの休日も、不朽の名作とわかった上で、オードリー・ヘプバーンが妖精のごとくキレイで可愛いと知った上で、観る。

恋愛結婚ではない。(いや、決して、それがいいってことではなくて、、)

出会い頭に出会って、事故的に衝突するかのごとく出会って、ではない。

今、例えば、僕と同世代、もしくは下の世代の人で、好きな映画は「ローマの休日」です、とか「タイタニック」です、と言う人に、「本当なの?」とちょっと言いたくなったりもします(ただの「好きな映画」、余計なお世話だと重々承知の上で)。

すでに名作中の名作とわかって観て感動した感動は本物の感動か、と聞きたくなる。

当時の、公開当時に劇場で観た人たちの感動には勝てないんじゃないかなと思ってしまう自分もいます。

「ローマの休日」以降、ストーリーが「ローマの休日」にインスパイアされた作品は数多くあります。

意識的でも無意識でも、制作者も、観ているコチラ側もそんな作品を数えきれないほど観てきました。 ほんの数%くらいの影響を受けている映画、ドラマ、漫画は、ゴマンとあるはずです。 ストーリーそのものが違っても、例えば、身分差がある恋愛とか、例えば、身元を隠したままの出会いであるとか。例えば、異国の地での同胞との出会いとか。

そのバイアスがかかった上で、今、そんな元祖である「ローマの休日」を観たところで、当時の映画館で事故的にこの作品に出会った人たちに、その感動を超えることは出来るのか。

「ローマの休日」以前に「ローマの休日」はなかった。 あったかもしれないけど、かなり希少で、いまほどメディアが発達してなかったことを考えると、丸々、コンテンツが初見な人がほとんどだったと思います。 そんな当時の人たちからすると、やっぱり類を見ない、とびっきりのストーリーだったはず。 衝撃はスゴかったと思います。

ビジュアル面でもそうです。 「ローマの休日」本編を観たことがない人でも、あの有名なヘプバーンの正面から撮った笑顔の写真は見たことがない人はいないのではないでしょうか。 ポストカードなり、ポスターなり、あのモノクロの写真は世界中に浸透しています。 当時、映画館で初めて、スクリーン上で、その笑顔を見た人は、その透明感や、妖精のような美しさに衝撃を受けたに違いありません。 すでに数えきれないほど、あの写真を見てきた僕たちと比べ物にならないほど。

やっぱり、オンタイムで見た人たちの感動には適わない。

映画という芸術に時代性は切っても切り離せないという側面があるのなら、当然です。

悲観することは全然ないんだけれど。 僕たちには僕たちの世代の代表作があって、僕たちには僕たちの感動があるわけだから。

なので、なおさら、予告編で見せすぎちゃうことに疑問を持ってしまうわけです。

特に、いま、普通に「カンヌ映画祭パルム・ドール受賞作品!」とか、「アカデミー賞何部門ノミネート!」とかまでご丁寧に教えてくれる予告編が主流です。 (観客動員を考えると、僕も配給会社の人間なら絶対、そうしちゃうけどw)

中には、劇場帰りの観客を捕まえてカメラに向かって「感動して泣いちゃいました~」だの「今年のナンバー1です!」だの言わせる予告編も普通にあります(人に感動決められちゃうのか?)。

とりあえず、どう感じるかを期待する前に観てみろよ。 そう思ってしまいます。

なので、冒頭のTSUTAYAの新サービス、「NOTジャケ借」は大賛成です。

ただ、、、、

実際は、NOTジャケ借したところで、レジで「ピっ」って、バーコードを通すと、伝票に、映画名、シッカリ出ちゃうんだってさ。なんだ、それ。

image by: TSUTAYAニュースリリース

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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