試用期間中に「能力不足」と解雇された中途社員は裁判で勝てるか

 

会社が負けました。「この解雇は不当」とされたのです。その理由は次の通りです。

  • 業務成績を確認する限り能力不足であったとは判断できない
  • (試用期間中に解雇されているが)このまま雇用を継続していても実績を上げることができなかったとは言い切れない(つまり、継続していれば実績は上げられたかもしれないと判断したということですね)

いかがでしょうか? もしかすると「年棒1,300万も払って、期待未満の社員を雇い続けないといけないのか!!」と、憤慨される経営者の人もいるかも知れません。

この場合の実務的な対応としては2つあると考えています。まず1つ目は、「受け入れ態勢の見直し」です。確かに即戦力で採用したつもりの中途社員がなかなか実績をあげられないと「こんなはずじゃなかった=能力不足」と、考える人は多いかもしれません。ただ、それは果たして本人だけのせいでしょうか。もしかしたら、会社の受け入れ態勢に改善できるところがあるかも知れません。

最終目的である「業績を上げる」のはお互い共通であるはずです。ちょっとした歩み寄りで大きく業績が上がる可能性があるのであれば単に本人のせいだけにして終わらせてしまうのはあまりにも、もったいない気がします。

もう1つ目は「評価制度をしっかり整える」です。正直、業績が上がらないのは本人のせいかも知れません。ただ、それは本人の「能力不足」というよりも「相性の問題が大きいでしょう。特に前職で実績を上げていた人であれば、能力はすでに充分にもっているはずです。

ただ、野球選手で大成した人がサッカー選手でもできるかというと必ずしもそうとは言い切れないのと一緒でどの会社でも必ず実績を上げられるとは限りません。そこで評価制度をしっかり整え、適切に評価することで本人に気づきをあたえ方向転換(場合によっては退職)をしてもらうのです。

また、評価制度を整えることは万が一の際に社員の実績を評価する客観的なデータにもなります(実際にその評価制度の客観性が認められて解雇が有効とされた裁判例や、降格が有効とされた裁判例もあります。ただし、くれぐれもそのデータを使っての解雇をおすすめしているわけでは決してありません。念の為)。

「(なんとなく)能力不足」では、お互いが不幸です。適正な対応が求められるところですね。

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【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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