なぜ「バナナの叩き売り」は始まり、そして廃れてしまったのか?

 

郷愁のバナナ物語

今の若い人たちにはとうてい理解しがたいことかもしれないが、バナナは、かつて、団塊の世代以上には一種、あこがれ的な果物であった。そして高価な果物の印象が強かったが、今はもう「な~んだ……バナナか!」的存在になってしまっている。一房、5~6本ついたもので200円以下。最も安い部類の果物である。

昔々、入院見舞い土産などに、たいそうな果物篭に詰め合わせて持って行って、喜ばれたものである。その篭の中でもバナナは主人公であった。今は実際のところ土産に持って行く人はいないだろう。

おいしく、栄養価も高いバナナ。それ自身は少しも悪くないのに、この相対的価値・ありがたみの低落はどうだろう。今のこどもにおじいさん(もうお父さんではない)のこどものころの ”あのバナナを腹いっぱい食べたい”というバナナへの思いを、いくら説明してもそれは無理かもしれない。

昔々、仕事かなんかで久しぶりで東京へ出て来たお父さん、バナナをかばんにつめられるだけつめ家族へのお土産に。東京上野界隈ではそんな風景が良く見られたのだろう。

普段は、一本のバナナを人数分に切って食べたり、病気の時、一本丸ごと食べさせてもらったなどと言う記憶がある。そうやって食べた時のでおいしさは格別だったと、ネットで述懐している人も。また、昔のテレビのギャグで、歩いていてバナナの皮を踏んで滑るというのを良く見かけたものだ。さすがに今ではみかけないが、それもバナナが貴重で、人気があったからだろうと……。

 

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団塊の世代以上には懐かしい郷愁の食べものたちをこよなく愛おしむエッセイです。それは祭りや縁日のアセチレン灯の下で食べた綿飴・イカ焼き・ラムネ、学校給食や帰りの駄菓子屋で食べたクジ菓子などなど。

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【著者】 UNCLE TELL 【発行周期】 月刊

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