読売は記事を読ませたくないのかも…新聞各紙の安保特別委員会の伝え方

 

集団安全保障の方が気になる?

【毎日】は2面に、集団安全保障に関する審議の内容を載せている。他紙にはこの内容は見当たらない。「武力行使の新3要件」が満たされれば、国連安保理の決議に基づく集団安全保障での武力行使に参加できる、それはしかも、日本が自衛権を行使する前であっても、国連決議を根拠に武力行使が出来るとした。

それ以外には5面に安保法案採決を巡る問題、民主党が、不規則発言など、審議中の首相の態度について抗議し、自民党も陳謝して再発防止を約束したとの記事。北沢俊美理事は「これ以上委員会に相応しくない態度なら、頭を冷やしてもらうため委員会を休ませていただきたい」と審議拒否の可能性に言及したという。

さらに、鴻池委員長の「あの日に腹を切っとけば」発言についても。

uttiiの眼

今朝の《毎日》は、不思議なことに《朝日》がトップに持ってきた「米艦防護」の話を載せていない。代わりにというわけではないだろうが、岸田外務大臣の発言についてはスペースを割いている。どうも、集団的自衛権の話よりも集団安全保障やPKOの方に関心が向いているように感じる。確かに、朝鮮有事を含め、集団的自衛権の行使の場面には現実性が薄い。安保法制が成立した場合に、真っ先に具体的に問題になるのは、南スーダンPKOであることは既に指摘されている。《毎日》はかなり以前から南スーダンの取材にも力を入れているようだから、編集部の中に、そうした取材の方向性に関する共通理解があるのかもしれない。

戦争法案で間違いない

【東京】は《朝日》と同様の記事を、1面左肩に置いている。中谷答弁に対する大野議員の批判も載せているのが特徴。政府によるこれまでの説明と、26日の答弁の内容を図で比較している。

関連して、2面の解説記事「核心」で、「首相の『戦争法案でない』発言を考える」と題して、安保法案は戦争法案だと考えるか否かについて、4人の識者に意見を求めている。4人は、立教大学の西谷修特任教授(比較文明学)、現代史家の秦郁彦氏杏林大学の金田一秀穂教授(日本語学)、漫画家の小林よしのり氏

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大野議員の指摘は重要だ。「女性や子どもを使って国民感情に訴え、立法事実を覆い隠すのは姑息なやり方だ」というのは本質的な批判で、この法案全体について立法事実が曖昧であり、立法の必要性がそもそも説得力を持って政府から語られていないという、あり得ないことが起こっていることを示している。安倍氏の説明が嘘だったという書き方をしてもよかったのではないかと思うほどの事態。

2面の記事については、小林よしのり氏1人にインタビューした方が良かったのではないかと思った。他の人もそれなりに興味深いことを言ってはいるが、全体に論点が散漫になっているように感じた。

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uttiiの電子版ウォッチ』2015/8/27号より一部抜粋

著者/内田誠(ジャーナリスト)
朝日、読売、毎日、東京の各紙朝刊(電子版)を比較し、一面を中心に隠されたラインを読み解きます。月曜日から金曜日までは可能な限り早く、土曜日は夜までにその週のまとめをお届け。これさえ読んでおけば「偏向報道」に惑わされずに済みます。
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