今では「嫌われ者」の年金は庶民の要望から生まれていたという事実

 

初回支払いは昭和35年3月3日でした(昭和34年11月分から昭和35年2月分までの4ヵ月分)。ただ、この時の国民年金支払いは福祉年金と呼ばれ、保険料を支払わなくても貰える年金でした。つまり税金から全額支給する無拠出制の年金。今の年金のベースである保険料を支払って将来に備えた結果で貰える年金(拠出制)とはちょっと違った。

まず、昭和34年11月分から支給されたのは70歳以上の老齢の200万人程の人に、そしてそれぞれ約20万人の身体障害者の方や母子家庭に福祉年金(当時年額12,000円。現在は年額399,300円)の支給が始まった。今は福祉年金を受給している人はほとんどいない。受給してるとすれば100歳は超えていらっしゃいますね…。

国民全ての人に年金を! といっても、国民年金が出来た時点で既に高齢で保険料負担する期間が無いとか短い人は全額税金でやるしかなかったから。

昭和36年4月1日時点で50歳以上の人(明治44年4月1日以前生まれの人)は70歳になれば老齢福祉年金を支給する事になった。50歳から55歳までの人は国民年金に任意加入して保険料納めて低額な福祉年金ではなく拠出制の国民年金を受ける事もできました。任意加入で納めなければ、70歳から福祉年金。

国民年金法が出来て、保険料を支払う形となったのは昭和36年4月1日から。最低25年今は最低10年の保険料納付とか免除期間があれば、国民年金支払いは65歳から。ここで、被用者年金に加入していない何の保障も無かった20歳から60歳までの人を強制加入とし、正式に「国民皆年金」となりました。

あとついでに医療保険である国民健康保険も全国適用になった。本当は医療保険が課題としては先だったんですけどね。国民健康保険は昭和13年に作られたが、農林漁業のみ適用だった。この昭和36年4月1日は国民皆年金と国民皆保険が同時に達成される凄い日だったんです。

ただし、サラリーマンとか公務員みたいな被用者年金の専業主婦とか、あと、学生は強制加入にはしなかった。つまり、加入してもしなくてもいい任意加入という形。サラリーマンや公務員の専業主婦とかは厚生年金や共済年金に守られている形(配偶者加給年金が付くし、夫が亡くなれば妻には遺族厚生年金が出るし)だったから強制加入させる必要が無いとされて任意加入になった。学生は負担能力が無いと判断されて任意加入とされた。

それにしても、当時全就業者4,200万人の内年金に加入出来てなかった人がとりあえず全て国民年金に加入する形にはなったけど、所得が低くて所得税納税者なんて国民年金加入対象になった2,500万人の内400万人くらいしかいなかったんですよ。住民税の均等割すら支払えない人も沢山いた

もし、所得がある人だけに加入させるとすれば2割の人程度しか加入できなくなってしまう。だから国民皆年金で国民年金強制加入の形を作ったものの保険料支払えない人が多いんじゃ、国民全てを国民年金に加入させれたとは言えないから、保険料免除制度で保険料支払えない人もカバーしたんです。国民年金の3分の1は国庫負担(税金)だから、せめてその税金分くらいは受け取れるように(平成21年4月からは国庫負担2分の1に引き上げ)。

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