その一方で、勇気を出していじめをやめさせた中学生が話題になっています。11月12日、中学生が身近な体験を通じて意見を述べる「少年の主張全国大会」が開かれ、新潟県の中学2年生、平沢幸芽さんが「仲間を守る一言」というテーマで意見を述べて、最優秀の内閣総理大臣賞を受賞しました。新聞に掲載された平沢さんの主張を要約すると、
皆でひとりの生徒を仲間外れにしてしまった。「こんなのいじめだ」と分かっていた。でも、自分がはぶられることは絶対に嫌で、自分の意見が言えない。そんな自分が大嫌いになった。そんな中、「過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる」という言葉に出会った。自分が変わらなければならない。自分が言うべきは、「自分を守るための言葉」ではなく、「こんなのいじめだよ。もうやめよう」という「大切な仲間を守るための言葉」だと気付いた。勇気を出して、友達に、「もうやめよう」と伝えて、皆でその子に謝った。今では「良い」、「悪い」と自分の思いを伝えられるようになった。その一言が、周りの大切な「仲間を守る一言」になるからだ。
(2017年11月14日付産経ニュース記事を要約)
勇気を振り絞った一言が心を打ちます。
どこの学校でも、子供たち自身の力でいじめが解決できれば、それが一番良いことだと思います。しかし、いじめを止めようとしたら、逆に自分がいじめの標的にされてしまった、というケースが後をたちません。「傍観者」はいけない、子供たち自身でいじめをやめさせる指導を、とよく言われますが、でも、「今度は自分がいじめられるかも知れない」という恐怖心には、あらがいがたいものがあります。
「いじめを止めたらいじめられる」、この恐怖心を乗り越えるには、「いじめを止めても絶対いじめられない」という雰囲気を作り出してあげなくてはなりません。仲間がいじめられているとき、他の子が「やめなよ」と言ってもいじめ返されない教室、先生に「仲間がいじめられている」と相談しても、「チクッた」と報復されない教室、そうでなければ、「仲間を守る一言」などいえません。
「いじめを止めてもいじめられない」という雰囲気を作るのは教師です。教師が、「いじめは悪。絶対に許さない」、「いじめからは私が守る」、「仲間を助ける勇気ある一言は大事」、「いじめの報告はチクリではない」と、いじめを許さない強い態度を徹底することです。実際にいじめがあった場合には、被害者側に寄り添い、他の教師と連携を取りながら全校をあげて、いじめ解決に取り組むことが大事ではないでしょうか。
そして、何よりも大切なことは、日々の毅然とした指導にあります。教師が、「キモー」とか、「くさー」という言葉を見すごさず、「今のは誰? 謝りなさい」と一言いうだけで、クラスの雰囲気が引きしまってきます。先生のその態度を見ているからこそ、「いじめを止めても先生が守ってくれる」という信頼が生まれ、「いじめを止める勇気」が出てきます。
学校や教師には、いじめのない環境で子供たちを学習させる責務があります。教師にも勇気が必要です。「悪いものは悪い、良いものは良い」と判断して、注意する勇気です。そして、子供たちが「傍観者」にならない教室、「仲間を守る一言」が言える教室を増やしていきたいと思います。
いじめかなと思ったら、ご遠慮なくご相談ください。少しでもお役にたてれば幸いです。
いじめから子供を守ろう ネットワーク
松井 妙子
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