独裁化する習近平が、自らの思想を共産党規約に明記させた意味

 

中国の特色ある社会主義の意味

そこで、冒頭に引いた大会の中心スローガンについて、さらに解説を続けることにしよう。「中国の特色ある社会主義」というのは、1つの決まり文句で、鄧以来の中国流の改革・開放路線のことである。共産党一党支配を維持しつつ、経済面では市場経済を大胆に取り入れて近代化を目指すという意味で、いわゆる「開発独裁の中国的形態のことと理解してよろしい。

開発独裁について、たまたま手元にある昔の日経記事は

強い権限を持つ指導者や政府が、市民の権利抑制も辞さずに資源を経済建設に集中的に投入する統治モデル。迅速な意思決定を通じた効率的な開発・発展と高い経済成長を狙えるという理由で『独裁』を正当化する例も多い。1980年代にインドネシアやシンガポールで成功し『東アジアの奇跡』といわれた。
(11年1月24日付)

と、他人事のように解説しているが、私の説では、明治以来の日本の薩長藩閥政治から昭和の軍部独裁戦後の自民党一党支配から今の安倍政権までは、全部繋がって開発独裁の日本的形態の諸相をなしている。

最も幼稚な中国批判として、「市場経済と言いながら共産党独裁を続けているのはおかしい」というのがあるが、軍事独裁や一党支配が市場経済と矛盾するどころか、ある段階ではプラスに作用することは、日本自身も、またシンガポールやフィリピンやインドネシアや韓国の軌跡も示していることで、何も驚くに当たらない。中国の場合は、たまたま共産党という巨大な統制装置があったので、それをうまく開発独裁に流用したというのが本当で、共産党なのに市場経済をやっているのが似合わないとかいうことではない。

さて、その中国の特色ある社会主義が「新時代」を迎えたというのはどういう意味か。その鍵は「小康社会(それなりにほどほどに豊かな社会)」という目標にある。このいささか奇妙な(というのも何を以て「それなり」とか「ほどほど」なのかの定義が不明)言葉を使い出したのは鄧で、江が第16回大会で「2020年までに小康社会を建設する」と目標時期を掲げた。胡錦濤は5年前の第18回大会で「小康社会の全面的な建設と完成を目指す」ことを謳った。それに対して習は今回、「2021年の中国共産党創立100周年までに(ということはあとわずか4年内に)小康社会の全面的完成(ということは例えば現在831あるとされる貧困県をゼロにする)を実現する決戦期」に入ったことを宣言すると共に、それを「中華民族の偉大なる復興という中国の夢」を達成するための「要の一歩」と位置付け、さらにその先、2049年の共和国建国100周年には「富強・民主・文明・調和の社会主義現代化強国」を作り上げるという遠い目標をも設定した。

つまり、これまで長い間、掛け声に終わっていた「小康社会の全面的完成」を実際にこの大会任期中に達成し、それを第一歩として「中華民族の偉大なる復興という中国の夢」に本当に踏み出していくという、その現実性こそがまさに新時代」なのである。そしてそれを切り開いたのは習であるから、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」となるのである。

print
いま読まれてます

  • この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け