結局「子宮頸がんワクチン」は接種すべきか?生物学者の見解は

 

HPVがなぜがんを誘発するかというと、子宮頚部の細胞の中で、がん抑制遺伝子であるp53(よく知られたがん抑制遺伝子で、がんになりそうな細胞を自殺に追い込む働きを持つ)とRb(Retinoblastoma遺伝子:細胞分裂を抑制して、結果的に発がんを抑制する遺伝子)の働きを止めてしまうからだ。HPVはp53やRbが産生するタンパク質の働きを抑制するタンパク質を作ってこれらの機能を無効にして発がんを促進することが分かっている。しかしなぜ、皮膚に侵入したHPVは通常は疣を起こしても皮膚がんを起こさないかは、分かっていないようである。P53やRbはすべての細胞に存在しているのだから、皮膚の細胞の中でも、子宮頸がんの細胞で起こるのと同じ反応が起こって、皮膚がんが発症してもよさそうではないか。発がんのメカニズムはまだ謎だらけなのだ。

さて、HPVがヒトの子宮頸がんの原因であるならば、天然痘やインフルエンザと同様に、ワクチンを開発して未感染の女性に投与すれば、子宮頸がんの予防ができるのではないかと考えるのはごく自然の成り行きである。HPVの種類は沢山あって、良性のものからがんを引き起こす悪性のものまで数百種類もあるようだが、現在では有効なワクチンが開発されている。性交渉が主たる感染源だとすると、中学生では手遅れかもしれないが、小学校の中学年までに投与すれば、子宮頸がんで苦しむ女性を劇的に減らせることは間違いないだろう。

print
いま読まれてます

  • 結局「子宮頸がんワクチン」は接種すべきか?生物学者の見解は
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け