中東に戻るアメリカ
アメリカの立場の変遷について触れておきましょう。オバマは、その二期目、中東への関心を急速に失っていきました。なぜ? 中東といえば、石油ですね。ところが、アメリカでシェール革命が進み、自国内にたっぷり石油、ガスがあることがはっきりしてきた。それで、「もう中東はいいや」となった。オバマは、サウジアラビア、イスラエルを冷遇し、アメリカと両国の仲は、とても険悪になりました。プーチンは、オバマが中東への関心を失っている隙に、勢力を拡大したのです。
ところが、2017年、イスラエル、ネタニヤフ首相の親友トランプがアメリカ大統領になった。彼は、オバマが破壊したイスラエル、サウジとの関係を修復しはじめました。そして、ロシアが、中東の覇者になっている現状が気にいらない。それで、「プーチン勝利宣言」にも関わらず、アメリカ、イスラエルは、「アサド軍攻撃」をつづけているのですね。
イスラエルが、シリアを攻撃するのは、「いざとなったらアメリカが参戦してくれる」と確信しているからでしょう。こう見ると、プーチンの「勝利宣言」は「早すぎたのかな」と思います。
確かに「戦術的」に見れば、ロシアの同盟者アサドは、生き残っている。しかし、「戦略的」に見れば、ロシアの行動に不満なアメリカは、対ロ制裁を解除しないでしょう。ロシア経済は、ますますボロボロになっていきます。プーチンが「戦略的勝利」を得たければ、アメリカに制裁を解除させることが、絶対必要です。しかし、現時点で、状況はますます悪くなっています。