特に北朝鮮のような国の場合、全てがトップダウンで決します。そのような相手との交渉は、基本的にトップ同士で行わなければ成功は望めません。ビジネスマン出身のトランプ大統領が、金正恩朝鮮労働党委員長の「会談すれば大きな成果が期待できる」という提案に「会おう」と即答したのは、その意味では最初からかみ合った部分があるのです。
これからの米朝関係がトップ同士で進められるということになれば、やるべきことは決まっています。実務能力の高い国務省などのスタッフに加え、民間を含む北朝鮮問題の専門家を配置すればよいのです。
国務省のナウアート報道官は、民間の専門家の知見を求めることに関連して「国務省は世界中で職務に当たる7万5000人の人員を擁している」と、専門家の不在を指摘するマスコミの質問を一蹴していますが、その通りだと思います。
その傍証となるのは、10日付読売新聞夕刊の1面トップの「米『北と接触重ねた』 国務長官 会談 働きかけか」という動きです。
関連して、「トップ同士の会談が決裂すれば米国の武力行使につながる恐れがある」との見方も報じられていますが、ここでも逆の見方が必要ではないかと思います。
特に北朝鮮の場合、金正恩委員長は自分の言動が国家と体制の存亡を決めることになることを理解しているわけですから、トランプ大統領の表情に注意しながら慎重な発言を心がけることは間違いないところです。トランプ大統領もそれに応えるような態度を示すはずです。
となれば、間に実務者を挟んだ場合よりも戦争につながる危険性は少なくなる、という見方も可能となります。
いずれに転ぶのか、それは結果を待つしかないわけですが、マスコミは少し角度を変えるだけで違う風景が見えてくることに気づき、ステレオタイプの言い回しを避けるようになって欲しいと思います。(小川和久)