100円が16340円に。なぜ年金保険料は60年でここまで上がったのか

 

話を戻しますが、そうやって現役世代の賃金が著しく伸びていき、年金額との差が開いていきました。たとえば、昭和40年初期の勤労者の平均賃金月額は40,000円くらいだったんですよ。昭和30年が18,000円くらいだったからその違いがわかると思います。

それに対し、国民年金ができた時は20歳から60歳までの40年間納めたら月3,500円の年金という設定だった。25年納めれば月額2,000円。現役世代の賃金はどんどん上がっていくから、老後の年金の額と差が開くばかり。

これじゃあ老後の生活の足しにはならないから、昭和36年から5年後の昭和41年から年金再計算により早速年金額も引き上げることになっていった。だから、国民年金発足当初は国民年金保険料が100円とかそんなで完全積立方式だったけど、昭和42年1月から35歳未満の保険料を200円に、35歳以上の人の保険料を250円に引き上げて、段階的に保険料を引き上げる修正積立方式に変わっていった

まあ、保険料引き上げないと年金の引き上げもできないですからね。そういえば、自分の子供のために親御さんがまとめて子供の40年分の保険料を支払ったという事もありました。昭和42年から保険料が段階的に引き上がる修正積立方式に変わる事になったから、この一気に保険料支払う制度は昭和41年に廃止されましたけどね。

で、年齢による国民年金保険料の区別を無くして保険料を一律にしたのは昭和45年7月から。兼ねてから課題でもあった、インフレにも対応するために年金を物価変動にも対応するための物価スライド制は昭和48年に導入された。

ちょうど同じ時期に、昭和48年の第一次オイルショックで昭和48年、昭和49年の2年間の間に40%くらい物価が狂乱的に上がったからその物価スライドも即座に発動し、年金額も一気に上がった。今じゃ考えられない事ですが^^;。あんまり物価が上がったから、トイレットペーパーの奪い合いみたいなことも起こった。

よって、積立方式ではインフレによる積立金の目減りが顕著な時代でもあり、追い付かなくなってきたし、その年支払った保険料を受給者に支払うという経済の変動に合わせて修正していける強みがある賦課方式に徐々に移行していったわけです。

そもそも、こんなに長寿国になったらいつまで生きるかわからないから積立では対応は厳しいでしょう。今までも言ってきた事ではありますが、年金は長生きというリスクに対して保険をかけてるんです。

また、昔は保険料額は少なかったのに今は16,340円も支払うとか不公平だとよく言われますが、公的年金が整備されていったことによりその分私的な負担(子供が老齢の親の面倒を見るとか)が減って、公的な負担(老齢の親の面倒は公的年金が支える)に置き換わっていっただけの話であり、この保険料に対する不公平論は全くの誤り。年金がなくなると単に私的な負担が増えるだけ

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
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