思春期のキスで感染する「キス病」が日本でもジワジワ増えている

 

伝染性単核症での発疹のリスク

問題は、その時にアミノペニシリン系と呼ばれる種類の抗菌薬が処方された場合です。一般名で、アモキシシリンやアンピシリン等と呼ばれているお薬。商品名では、サワシリンオーグメンチンなどと呼ばれているお薬です。これらのアミノペニシリン系の抗菌薬を投与されると全身に発疹が出ることがあります。発疹は主に体幹と手足に出現し、斑状または丘疹状の鮮明な紅斑(赤い発疹)です。伝染性単核症そのものでも発疹をみることがありますが、アミノペニシリン系の薬が投与された場合にはそのリスクがかなり高まるのです。

細菌性咽頭炎と伝染性単核症は紛らわしいです。検査で詳しく調べれば、その区別はできますが、伝染性単核症を疑わないとその検査を行う方向にはいきません。担当する医師によってはこの病気の診断に慣れていない場合があります。その時には抗菌薬が投与されて、全身に発疹が出てくるリスクがあります。

そこで私がお勧めしたいのは、頸の腫れているリンパ節の部位を確かめる方法です。頸の左右横側には、それぞれ胸鎖乳突筋という筋肉があります。細菌性咽頭炎ではこの筋肉の前方にあるリンパ節が腫れます。一方で、伝染性単核症では、この筋肉の後方にあるリンパ節も腫れます。指で触れてみて、触れるリンパ節にホワイトボードマーカーなどで印をつけておき、筋肉の本を利用して比べてみると、そのリンパ節がどの部位にあるかわかります。医療機関に受診するときに、医師にその部位について情報提供をすると良いでしょう。

伝染性単核症の原因病原体

伝染性単核症の大部分がEBVの感染によります。一部ではありますが、EBV以外の病原体による伝染性単核症もあります。サイトメガロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、肝炎ウイルス、トキソプラズマ、リケッチアなどによってもおこりうるのです。

ヒト免疫不全ウイルスなどの感染では継続的な治療が必要です。そのため、伝染性単核症では原因の病原体を特定することが重要ですので、やはり医療機関の受診をお勧めします。その際にアミノペニシリン系抗菌薬の処方を受けないように、リンパ節の部位について、医師に対して注意を促すようお勧めします。

文献

Dunmire SK, Verghese PS, Balfour HH Jr.. Primary Epstein-Barr virus infection. J Clin Virol. 2018 May; 102: 84-92.

image by: shutterstock.com

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