思春期のキスで感染する「キス病」が日本でもジワジワ増えている

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思春期にキスをすることで感染する病気があることをご存知でしょうか? 別名「キス病」とも呼ばれる「伝染性単核症」という聞きなれない病名ですが、最悪の場合、脾臓が破裂する恐れもあるということで甘くみると大変なことになる可能性もあります。メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』の著者で現役医師の徳田安春先生は、この病気の感染ケースやメカニズムを説明するとともに、病院で別の病気と勘違いされ処方薬を間違われるリスクとその回避法についても紹介しています。

子供と青年では伝染性単核症に注意

伝染性単核症という病気があります。伝染性単核球症とも呼ばれ、子供から若年青年層によくみられます。大部分が、エプシュタイン・バール・ウイルスEBV)と呼ばれるウイルスに初めて感染するときに起こります。乳幼児期にEBVに初めて感染する場合は、ほとんど症状がない不顕性感染であることが多いです。

しかし、思春期以降に感染した場合に伝染性単核症を発症することが多くなります。このウィルスに感染して治った人々の唾液中に、このウィルスが排泄されることがあり、唾液を介して別の人に感染させることになります。そのため、思春期にキスをすることによって感染することが多いので、キス病とも呼ばれています。最近では、ペットボトル飲料の回し飲みによって感染するケースが目立ちます。

日本では患者の届け出の義務はないために、正確な患者発生数は不明ですが、米国では年間一般人口10万人当たり約50人のケースが発生しています。欧米に比べてもともと日本では発生数が少ないと言われていましたが、近年増加傾向が示唆されており、日本全国で毎年かなりの数の患者が出ていると思われます。

伝染性単核症の症状

伝染性単核症の起こるメカニズムを見てみましょう。多くの伝染性単核症の場合はEBVというウィルスが原因です。EBV はまず咽頭の細胞に侵入し、そこで増えたウイルスは、次にBリンパ球と呼ばれる免疫細胞に侵入大量に増殖します。このウイルスに対抗するために、細胞傷害性Tリンパ球と呼ばれる免疫細胞が増加してさまざまな物質を放出するために多彩な症状が出てきます。

1ヵ月前後の潜伏期を経て、発熱喉の痛み頸のリンパ節腫脹などをきたします。脾臓が大きくなりますが、その時に左側腹部に強い打撃を受けると脾臓が破裂することがあります。そのため、この病気の診断を受けた人は、約2カ月間はコンタクトスポーツ禁止となります。発熱は38度以上の高熱で、1~2週間持続する場合が多いです。40度以上の高熱が続くことがあります。そのために、医療機関に受診することが多くなります。

診察では、扁桃には偽膜、口蓋には強い発赤と出血斑を認め、リンパ節の腫脹は1~2週頃をピークとして全身に認められるものの、頚部が主です。血液検査では、異型リンパ球の増加、肝機能検査異常、肝脾腫などを認めます。発熱と喉の痛みがあるので、溶血性連鎖球菌などによる細菌性咽頭炎と紛らわしくなります。EBVはウィルスなので抗生物質は効きませんが、細菌であれば抗生物質は効くことがあります。

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