欧州と中国が急接近
トランプにいじめられている欧州。どうすればいいのでしょうか? そう、予想通り、中国との関係強化に乗り出します。
<中国EU首脳会議>共同声明に「反保護主義」明記
毎日新聞 7/16(月)23:43配信
【北京・河津啓介】中国と欧州連合(EU)は16日、北京で首脳会議を開いた。会議後に発表した共同声明には「反保護主義」が明記された。共に米国との通商問題を抱える中国と欧州が連携強化を確認した形だ。
欧州も中国も、「アメリカから貿易戦争を仕掛けられた」という認識。だから「連携を強化しましょう」と。
会議には中国の李克強首相とEUのトゥスク欧州理事会常任議長(EU大統領)、ユンケル欧州委員長が出席。会議後の共同会見で、トゥスク氏は同じ日に米露首脳会談も開かれることに言及し、欧州と米露中が「国際秩序の破壊や貿易戦争の開始を避ける義務がある」と訴えた。
(同上)
「欧州と米ロ中が、国際秩序の破壊や貿易戦争の開始を避ける義務がある」とあります。欧米ロ中とはいいますが、トゥスクさんの頭の中にある問題は、もちろんトランプ・アメリカでしょう。
トランプさんは、パリ協定、イラン核合意から離脱し、エルサレムをイスラエルの首都と認定し、国際秩序を破壊している。そして、貿易戦争を開始した。(もちろん、国際秩序破壊に関しては、ロシアの「クリミア併合」も含まれるでしょう)。
一方、李首相は「中国とEUが多国間主義と自由貿易を堅持する声を共に上げることは、世界に前向きな影響を与える」と強調。EUとの投資協定締結に向けた交渉を加速し、市場開放を拡大する意欲を示した。
(同上)
欧州はともかく、中国が、「多国間主義と自由貿易を堅持しよう!」と大声で主張している。日本人は、「中国がそんなこというな!」と思いますが、世界的には、「トランプの方が迷惑!」という流れになっています。
最後に、毎日新聞の記事は、中国の戦略について触れています。
中国は米中関係の悪化を見据え、欧州との関係を重視している。
(同上)
さすが孫子の国ですね。
李首相は今月ドイツを公式訪問して経済連携の強化で一致。10日には、ノーベル平和賞を受賞した民主活動家で昨年7月に事実上の獄中死をした劉暁波氏の妻、劉霞さん(57)を解放し、人権問題に関心の高い欧州諸国に配慮を示していた。
(同上)
英雄・劉暁波さんの奥さん、劉霞さんも「政治利用」されたのですね。「政治利用」でも、ドイツに脱出できてよかったですが。
いずれにして、中国はEUを味方につけることで、覇権に何歩も前進します。なんといっても、EU(イギリスも含む)は、世界GDPの22%を占めている。それに、「世界一人権にうるさい」EUが味方につけば、誰も中国の人権を問題視することはなくなるでしょう。
アメリカは、29か国からなる巨大軍事ブロックNATOを事実上支配しています。もし、中ロが一体化してNATO解体工作をし、成功すればアメリカは欧州で力を失うでしょう(現時点では非現実的に思えますが、たとえばNATO加盟国トルコとアメリカの対立は、とても深刻です)。
というわけで、トランプさんに対抗するため、欧州と中国が一体化しています。トランプさんが「言行一致」で「アメリカ・ファースト」を追求している結果ですね。それで、アメリカは、敵が増え、味方が減り、ますます力を失っています。
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