10月10日、NY株式相場が史上3番目の暴落を記録しましたが、その原因は長引く米中貿易戦争による世界経済の不透明感だと言われています。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、貿易制裁の「関税引き上げダメージ」が中国のみならず諸外国に飛び火する構図や、国内にマイナス要因を抱えている日本への影響等について解説しています。
NYダウ急落、831ドル安~米中貿易戦争が世界的経済危機に転じるロジック
RPEでは「世界的経済危機に備えましょう」という話をしました(「米中貿易戦争で世界経済危機に。日本国民はどう備えるべきなのか」)。そして10月10日、NYダウが831ドル急落したというニュースが飛び込んできました。
〔米株式〕NYダウ急落、831ドル安=金利高や貿易摩擦に懸念(10日)
10/11(木)5:30配信
【ニューヨーク時事】10日のニューヨーク株式相場は、高止まりする米長期金利や世界的な貿易摩擦の悪影響に懸念が広がり、急落した。優良株で構成するダウ工業株30種平均は前日終値比831.83ドル安の2万5,598.74ドル(暫定値)と、史上3番目の下げ幅で終了。ハイテク株中心のナスダック総合指数は同315.97ポイント安の7422.05で引けた。
このままいくのかどうかは、わかりません。しかし、世界中の専門家が、「大雨警報」を発しています。皆さんもご注意ください。今日は、「米中貿易戦争が、世界的経済危機に転じるロジック」を理解しておきましょう。
なぜ中国の危機は、世界に波及するのか?
わかりやすいように、中国の大企業A社を例に考えてみましょう。A社は、アメリカへの輸出で大儲けしていた。ところが米中貿易戦争がはじまり、関税が10%(あるいは25%)に引き上げられた。それで、アメリカへの輸出が減った。その時、A社は、どうするでしょうか?生産を減らしますね。従業員の給料を下げるし、きっとリストラもすることでしょう。
A社は、利益が減ったので投資を減らす。減給された従業員は、消費を減らす。リストラされた元社員は、もはや「買い物」(消費)とかいってられない状況です。A社の話をしていますが、同様の境遇に陥る中国企業が、「山のよう」に出る。つまり、
- アメリカ関税引き上げ→中国企業輸出減→生産減→給与引き下げ、リストラ→所得減→資・消費減
になった。すると、もはや「輸出企業」だけの問題ではなくなってきます。A社をリストラされた人は、物を買わないのですから。そうなると、例えば百貨店の売り上げ、利益が減ってくる(繰り返しますが、A社と同じ境遇の企業が、「山のようにでてきます)。百貨店で、減給、リストラがはじまる。百貨店に品物を入れている会社も売り上げ、利益が下がる。百貨店と取引がある会社で、減給、リストラがはじまる。こうして、輸出企業からはじまった危機は、中国全体にひろがっていく。図にすると、
- アメリカ関税引き上げ→輸出企業生産減→輸出企業所得減→リストラ→減給された人、リストラされた人はものを買わないので消費減→他社生産減→他社所得減→ 他社消費減
このように、
- 所得減→消費減→生産減→所得減→消費減→生産減
というプロセスが延々と繰り返され、不景気になっていく。中国で消費がさがれば、まず、現地に出ている日本企業、中国に輸出している日本企業の売り上げ、利益が減ります。しかし、その日本企業の社員は、同時に日本国の消費者でもある。それで、中国の不況が、日本に飛び火して、日本の景気も悪くなっていくのです。