【書評】京大名誉教授が描く、死より怖い「死に至るプロセス」

 

我々は死の瞬間までずっと生の中にあり、それは老いにせよ病にせよ、確実に生を蝕み、徐々に崩壊させていくものである。恐ろしいのは「死」ではなく、「死にきれないこと」にある。もはやとは呼べない状態を生きざるを得ないのだ。しかも、多くの場合、老と病をはさんだ緩慢なが続くのだ。

「死」とは個人的現象であるにもかかわらず、個人が自己決定できないものである。「死」は「個」であり、徹底的に「孤独」であるにもかかわらず、他者に委ねなければならない。自分だけではなし得ない。そこには「自己責任」も「自己決定」もない。末期癌患者を自宅で看取った人の話では、死にゆく過程で一番恐ろしかったのは、容態の急変と排泄だったという。嗚呼……。

人は一人では死ねないのだ。決して「自然な死」なんてものはない。死は怖いとか怖くないとかいうのは無意味だ。本当に怖いのは死に至るプロセスなのだ。ってことを、改めて認識すると本当に怖い。著者の考えに同意するところが多い。歳とったなあと思う人は、味わいながら読むべし読むべし。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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