テロリストは見抜いている。わが国のテロ対策にひそむ深刻な弱点

 

警察比例の原則とは、警察権の発動に際し、目的達成のためにいくつかの手段が考えられる場合にも、目的達成の障害の程度と比例する限度においてのみ行使することが妥当である、という原則を言います。実質的には、複数の手段がある場合は、対象(国民)にとって最も穏和で、侵害的でない手段を選択しなければならない、と解釈されています。

もっとかみ砕いて言うなら、相手がピストルならこちらもピストル、ライフルならこちらもライフルというような武器の使い方が求められ、軍事組織が最も避けなければならない「兵力の逐次投入」にあたるような対処しかできないのです。軍事組織は、任務達成のために「兵力の集中使用」を旨としています。相手を上回る威力の武器で、一気に制圧するのが軍事組織の基本的な考え方です。

テロリストや特殊部隊の強みは、いつ、どこで、何を目標として、どんな手段で攻撃するのか、その全てを決めることができるということです。狙われる側は、常に不意打ちに遭い、そこから反撃しなければならない宿命にあります。そうであればこそ、わずか19人のハイジャック犯が9.11同時多発テロで米国を震撼させることができたとも言えるのです。

しかも、相手は日本の警察が警察比例の原則に縛られていることを知っており、目的達成のために意表を衝いた先制攻撃を仕掛けてくることは覚悟しておかなければなりません。そのとき、警察比例の原則にがんじがらめになっている思考法のもと、相手が使った武器の種類などを考えていたら、たちまち殲滅されてしまうでしょう。

米国の法執行機関の対テロ部隊であっても、警察比例の原則は最大限尊重されます。しかし、必要に応じては先制的にテロリストを制圧することもまた常識です。日本の警察のように、杓子定規に考える体質では張り子の虎に過ぎず、その最大の弱点をテロリストに見破られていることを忘れてはならないと思います。(小川和久)

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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