不審な領収書
【毎日】は、社会面に場所を移して写真入りの大きな記事を掲載。見出しは「森友渦中 政府『公人でなく私人』」「昭恵氏 なぜ推薦枠」「麻生氏は『100~200人」」「宛名なし領収書『ありえぬ』」「過去に前夜祭 ANAホテル」。記事は、「不自然な点を検証」する構えのもの。
見出しに現れているように、焦点は「“私人”昭恵夫人の推薦枠」と「宛名なし領収書」。
《毎日》は、森友問題に関わって「首相夫人は私人である」との閣議決定で「私人」とされた昭恵氏が、今回「桜を見る会」の招待客選定を巡り「安倍事務所において幅広く参加希望者を募る過程で夫人からのご推薦もあった」と大西内閣審議官が答弁したことに見られるように、事実上「推薦枠」を持っていたとの疑惑が生じた過程を再検証している。
もう1点の「領収書」の件。前夜祭での参加費用についての安倍氏の説明は「会場入り口の受付で安倍事務所の職員が1人5,000円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受け付け終了後にすべての現金をホテル側に渡すという形で参加者からホテル側への支払いがなされた。受付の際にはホテル側職員も立ち会っていた」というもの。
安倍事務所は集金を代行しただけで後援会としての収入も支出もないから、政治資金収支報告書への記載義務はないという主張になる。しかし、この説明通りだとすると、安倍事務所は料金を支払う前にホテル側から領収書を受け取っていたという不都合が生じる。また、少なくとも2015年と18年の前夜祭では、「株式会社ニュー・オータニ」が発行したとみられる宛名未記入の領収書を、参加者が受け取っていたことが分かっている(《毎日》が入手しているという意味)という。
《毎日》の取材に対して別のホテルは「領収書はお支払いしたものに対して発行するもの」として、事前にホテル名義の領収書を渡すことはあり得ないとし、また郷原信郎弁護士は「一流ホテルが宛名のない領収書を大量に発行するというのは本来あり得ない」とし、「領収書の発行者名が『株式会社ニュー・オータニ』だったとすると、そもそもホテルのスタッフが現場で発行する正規の領収書だったのかどうかも分からない」と言っているようだ。
郷原弁護士の言うように、「株式会社ニュー・オータニ」名義というのは変だ。国内だけで7軒のホテル(うち4軒は子会社直営)の全体を見ている運営会社の名義で、個々のホテルのバンケットでの飲食代領収書を出すというのは考えにくい。何か資材の取引でもしたのなら別だが、ホテルの施設を利用した場合の領収書には、その店の名前が必ず入っている。宛名のないものは勿論、宛名が書いてあろうとも、「前夜祭」で配られたとされるこれらの領収書は、明らかにインチキであろう。
「夫人枠」の否定の仕方
【東京】は2ヵ所で3本の記事を展開。1面左肩と2面。見出しは「政治推薦名簿のみ即廃棄」「桜を見る会 各省は最低3年保存」(以上、1面)、「菅氏 後援会50~60人招待」「桜を見る会 麻生氏100~200人推薦」「昭恵氏関与で「私人」議論再燃」「政府「夫人枠」を否定」(以上、2面)となっている。
1面については【セブンNEWS】の第6項目を再掲する。
首相主催の「桜を見る会」への招待客選定を巡り、各省は推薦名簿の保存期間を最短でも3年と定めていた。11省中6省は10年。内閣官房は安倍首相や菅官房長官ら与党政治化の推薦名簿を1年未満で廃棄すると規定。政治推薦だけが「即廃棄」されていたことに。
2面のうち、特に重要なのは「昭恵氏」に関するもの。
参院内閣委員会での質疑で、立憲民主党の杉尾秀哉議員は政府が2017年3月に昭恵氏の立場を「私人」とする答弁書を閣議決定したことを踏まえ、「私人が税金を使った公的行事に、自分の友人を幅広く招いていいのか」と質問。菅官房長官は「総理からの推薦だ。(首相が推薦した)約1,000人の中に含まれている」と述べ「夫人枠」を否定したのだが、20日の官僚の答弁では「安倍事務所で幅広く参加希望者を募る過程で、夫人からの推薦もあった」と明かしていたとする。
招待者に関して首相が意見を言うことはあったと認めながら、最終決定は内閣が行ったといって自らの「枠」を否定するのと同じように「夫人からの推薦もあった」といいつつ、それは総理の「枠の中」、つまり推薦したのは総理であって夫人ではない、と言い募る。「入れ子式」とでも言ったらいいか、この方式で説明すれば、どんなことでも責任を負わずに成し遂げることができる。「忖度」はその究極のあり方で、官僚なりを自動操縦するが如き権力の自由自在を、これ以上放置しておくのは全くよろしくないと思う。
image by: 安倍晋三 - Home | Facebook