計算方法の違いで厚生年金は多くなったのか?少なくなったのか?

 

数字のからくりを知る

このように、賞与が含まれても年金額は平行になるようにされているわけです。

なお、7.125を1.3で割ると、5.481になります。賞与が含まれる事で1.3上がった分を省くため。給与を1として、賞与が3.6ヶ月分支払われる事を基準としている。こうするとさっきの月給与50万円に対して、50万円×3.6ヵ月=180万円が年間支払賞与額ですよね。給与が年間50万円×12ヵ月=600万円と、賞与180万円の合計780万円になる。つまり、600万円×1.3=780万円(月平均65万円)となる。

このまま旧乗率の7.125で計算してしまうと、65万円×7.125÷1,000×92ヵ月=426,075円。しかし計算過程にて1.3で割ると、65万円×(7.125÷1.3=5.481)÷1,000×92ヵ月=327,764円になる。

そうすると賞与を含めない平成15年3月以前のやり方である、「50万円×7.125÷1,000×92ヵ月=327,750円」と給付がほぼ同じになり、平成15年3月以前と4月以降で平行になる。まあ賞与分年金額が増えちゃうから、その分下げちゃおうという事ですね。

いやいやいや、賞与からも保険料取るようになったのに年金引き下げたら何のために、賞与も含み始めたんだ!って話ですよね。賞与からも保険料を徴収するまでは、以前こういう事があったんですね。会社側としては負担の大きい厚生年金保険料をできるだけ安く支払いたいから、給与(標準報酬月額)を低く支給して、その代わり賞与をドカンと支払って保険料徴収を逃れようと。こういう事もあったので賞与からも保険料を徴収すれば逃れられなくなる。

とはいえ…現代は非正規雇用者が2,000万人ほどに急増(昭和60年頃は650万人くらい)したため賞与が支払われない従業員や、支払われても少額という場合だと、給付乗率の引き下げは実質的な年金額の引き下げのようなものではありますが…^^;

※ 後記

平成15年4月から賞与にも保険料率を掛けて徴収するようになったが、それまで月給与(標準報酬月額)にのみ掛けていた17.35%の保険料を、賞与が含まれても月収ベースにするために13.58%の保険料率に下げた。

なお、厚生年金保険料は平成10年頃の金融大不況の影響で平成8年10月から引き上げは凍結されていたが、平成16年10月から毎年0.354%ずつ引き上げながら平成29年9月で上限の18.3%を迎えて現在に至る。

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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