パンデミックへの国際的な対抗手段は、本当に「分離」で良いのか

 

「エボラ出血熱が大流行したときには、アメリカはその種の指導者の役をこなした。2008年の金融危機のときにも、グローバルな経済破綻を防ぐために、率先して十分な数の国々を結束させ、同じような役目を果たした。だが近年、アメリカはグローバルなリーダーの役を退いてしまった。現在のアメリカの政権は、世界保健機関のような国際機関への支援を削減した。そして、アメリカはもう真の友は持たず、利害関係しか念頭にないことを全世界に非常に明確に示した。そして、新型コロナウイルス危機が勃発したときには傍観を決め込み、これまでのところ指導的役割を引き受けることを控えている。たとえ最終的にリーダーシップを担おうとしても、現在のアメリカの政権に対する信頼がはなはだしく損なわれてしまっているため、進んで追随する国はほとんどないだろう。『自分が第一 ミー・ファースト』がモットーの指導者に、みなさんは従うだろうか?」

この指摘は日本の寄る辺もないような政策決定の不安定さにもつながっているようにも思う。ハラリ氏は米国の自国第一主義により「今や外国人嫌悪と孤立主義と不信が、ほとんどの国際システムの特徴」と指摘しており、日本も同様であろう。だから、再度信頼を構築できないかと考える。ハラリ氏の論文も希望を示し結んでいる。「目下の大流行が、グローバルな不和によってもたらされた深刻な危機に人類が気づく助けとなることを願いたい」とし、

「今回の危機の現段階では、決定的な戦いは人類そのものの中で起こる。もしこの感染症の大流行が人間の間の不和と不信を募らせるなら、それはこのウイルスにとって最大の勝利となるだろう。人間どうしが争えば、ウイルスは倍増する。対照的に、もしこの大流行からより緊密な国際協力が生じれば、それは新型コロナウイルスに対する勝利だけではなく、将来現れるあらゆる病原体に対しての勝利ともなることだろう」

論文のタイトルはネット上では「人類はコロナウイルスといかに闘うべきか──今こそグローバルな信頼と団結を」であったが、誌面では「リーダーのいない世界での疾患」(Disease in a world without a leader)だった。私たち社会の「ケア」が試されているのだ。

image by: Igor Shurin / Shutterstock.com

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