新型コロナの会見が分かりにくい。障がい者への配慮がヒントに

 

世界最大の死者を出している米国で最も被害の大きいニューヨーク州でも連日クオモ州知事が記者会見を開いているが、発表時には大きなスクリーンでグラフや会見のポイントを明示しており、テレビでも同様で発言者の姿だけではなく、明示した図等を放映している。

東京都の会見でも、見せることを意識した資料提示を行っており、NHKの首都圏ニュースではその会見をそのまま放映している部分もあり、行政の記者会見としては先駆的かもしれないが、「COVID-19」が大きく描かれた衝立ボードや専門的な言葉を言いたがる姿勢は、専門性への壁を見せつけているようで、庶民が理解しようとする隙を与えていない印象を残す。ここまで「見せる」ならば、もっと柔らかく、もっと分かりやすく、をお願いしたい。

大阪府では現状をタイムリーに伝えようと、囲み取材を記者会見のような形にしているのは、市民向けの姿勢ではあるが、メディア向けの対応に終始してしまっているようで、そのメディアを通じて市民に声が届くことをもう少し意識してもらいたい。多くの記者会見では知事の口元がマスクで覆われていることで感情が伝わりにくいし、聾唖の方にとっては「口元で読む」ことが出来なくなる。

だからこそ、ちょっとしたフリップでもよいし、小さなホワイトボードでもよいし、何かキーワードを示し、今重要なことを伝えることを心掛けるべきであろう。

障がい者支援に従事する人にとっては、新型コロナウイルスに伴う今の危機感を支援の対象者と共有できないまま、行動に制限をかけることほど、ストレスのかかる仕事はない。

先日、重度障害者施設の日課である散歩に遭遇したら、人と人との間隔を開けながら散歩をしているものの、「毎日の約束」である手をつなぐことは維持しなければパニックになってしまう、と言って消毒を入念にしていた。自治体の会見で何を注意しなければいけないのか、分かりやすい絵で描くなどで伝えられれば、現場の職員はありがたいはずである。

新型コロナウイルスに関する記者会見の目的は正確な情報を伝えて、市民一人ひとりに拡大防止を呼び掛けることの1点だ。その目的からすると、「伝えればよい」ようなこれまでの姿勢での記者会見は行政の怠慢で、行動に結び付けてもらう「分かりやすい」記者会見が必須だ。それには「障がい者にも伝わるように」を考えると、非常にシンプルにイメージできると思う。

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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