中国に走る動揺。予想以上だったトランプ「国交断絶」恫喝の効果

 

米国の中国バッシング

トランプ大統領は、再選を果たすためには、中国に対して強く出て、国民の支持を強固にする必要があり、バイデン候補のあやふやな対中政策が間違いであると強力に言う必要がある。この主張が国民に受け入れられたら勝つ可能性もあると考えているようだ。

このため、米公務員年金基金の中国企業への投資を中止しろと命令して、基金は投資の無期延期を決め、ファーウェイ製品調達禁止の大統領令を1年延長し、米半導体企業へのアクセスも制限した。また、NY証券取引所に上場している中国企業への監視を強めるとも述べている。米国の先端技術や資金が中国に流れないようにするようである。

トランプ大統領は、続けて「私たちは多くの措置をとることができる。中国との関係を遮断することもできる。もし関係を途絶えさせたら、5,000億ドル(約54兆円)を節約できる」と述べた。このような断交とも受け取れる強い表現で中国を威嚇した。しかし、中国手持ちの米国債は、1.1兆ドルあり、米国債の無効化は排除されているようだ。その上に、米国議会は両党一致して、ウイグル人権法案などの中国制裁法案を多数可決している。

それに対抗して、中国は、アップル、シスコシステムズ、クアルコム、ボーイングを「信用できない企業リスト」に登録して、中国国内活動を制限する構えであるが、中国側は、国交断絶を心配し始めている。

この理由は、この米国の対応で、中国から投資を引き揚げ、貿易を止められたら、新型コロナで痛めつけられた中国経済が持つのかという疑問が出ているからだ。また、中国企業の多くがNY市場で上場しているし、それが信用になっている。NY市場から追い出されると、中国企業に投資していた日本企業にも大きな影響が出る。

また、今、中国は新型コロナの影響で失業率は20%以上になっているとも言われている。企業倒産も多く出ているはず。中国企業は、今までも借金が多く、何とか政府、人民銀行が企業の赤字を穴埋めしていたことで成り立っていた。NY市場で投資された資金や海外企業の税金が頼りなはずが、海外企業の撤退で、それもなくなる。

中国の経済崩壊でミンスキー・モーメントが来ると、世界的な経済金融崩壊になる。中国が倒れると世界的な金融崩壊になる可能性も出てくる。日本も例外ではない。多くの企業が中国に進出しているが、その企業にも、大きな影響が出る。それはアップルなど世界的な企業群にも出る。

このため、トランプ大統領の中国バッシングは金融経済的に危険であるが、中国も必死なのであろう。失業者が多く、不満がたまり爆発寸前なのかもしれない。このため、軍事的な脅威を周辺国に与えている。もし、中国が金融経済崩壊になると、他国を軍事力で攻めてくることもあると身構えることだ。

そこを見越して、トランプ大統領は、中国にブラフを掛けているとも見える。しかし、中国がコロナ発生源調査を受けることもできない。武漢の研究所から漏れたことが判明してしまい、膨大な賠償金請求になる事は避けたいのであろう。

しかし、コロナ・ショックの上に中国経済崩壊が重なると世界的な金融経済恐慌は一層ひどくなる。日米欧の中央銀行の量的緩和では、そのショックを吸収できなくなる。世界の大破局になり、株価大暴落にもなる。今まで見たことがないような大底になる可能性もある。

トランプ大統領は、株価が大暴落したら、再選もないと見ているから、ブラフだけであると祈りたいが、どうであろうか?

新型コロナウイルスの世界の状況

アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の17日午前3時時点の集計によると、世界全体で新型コロナウイルスの感染が確認された人は、459万6,304人となり、亡くなった人は、30万9,685人となった。

感染者の多い国は、アメリカで145万4,504人、ロシアで27万2,043人イギリスで24万1,455人、スペインで23万698人、イタリアで22万4,760人、ブラジルで22万2,877人などとなっています。ロシアとブラジルの増加が著しい。先進国から新興国に流行が移動している。

死者の多い国は、アメリカで8万7,991人、イギリスで3万4,546人、イタリアで3万1,763人、スペインで2万7,563人、フランスで2万7,532人、ブラジルで1万5,046人。ブラジルの増加が著しいし、ロシアは死者数を胡麻化していると英国の新聞は言う。

米トランプ大統領は、感染者数、死者数ともに増大しているが、経済再開を急いでいる。国民がそれを望んでいるからだが、民主党や感染症専門家が経済再開を躊躇しているので、再選に有利との判断がある。トランプ劇場が11月まで続くことになる。

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