女性が受け取るものというイメージが強い遺族年金ですが、現在では男性側も貰いやすくなっていることをご存知でしょうか。とは言えその仕組みはなかなか理解が難しい場合も。そこで、今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、どのような場合に「扶養されていた妻」の遺族年金が発生し夫や子が受け取ることができるのか、事例を挙げつつ詳しく解説しています。
扶養されていた妻が死亡したのに遺族給付は夫や子に発生するのか
遺族年金が発生する時は「死亡時点で亡くなった人に生計を維持されていた」という条件があります。その文言を見ると養われていた人が遺族となった場合が対象となるような気がしますよね。だから、サラリーマンや公務員の扶養に入ってるような人が万が一死亡した場合は遺族年金は発生しないと思ってしまう。例えばサラリーマンの夫の扶養に入っていた妻が死亡したら夫には遺族年金は出ないのではないかと。
この場合本当に夫には遺族年金なんて貰えないかというと、そうではないです。年金で言うところの「生計を維持されていた」というのは、遺族年金を請求しようという人の前年の収入が850万円未満(または前年所得が655.5万円未満。一時的な所得は除く)で、生計を同じくしていた(住民票が同じだったとか同居していたとか)という意味。これに当てはまれば請求は可能。ちなみに遺族年金には結婚していなければならないという条件は無く、事実婚も認められる。
だから、もし被扶養者だった妻が亡くなってもサラリーマンや公務員の夫が上記の条件に当てはまるなら遺族年金は貰える可能性は普通にある。可能性は普通にある…という表現にしたのは、いくつか他に制度的な条件もあるから死亡者の年金記録や、残された家族が誰なのかとか見る必要がある。今回はそういう点を見ていきます。
ところで、遺族年金というのは男性には厳しくて、女性が貰うものだっていう認識が強いですが今の時代は非正規雇用が急激に増えて給料が厳しいというのは男女ほぼ関係なくなってきましたよね。共働きも珍しくはなくなった。だから、そういう点も踏まえて遺族年金は平成26年度からは男性側も貰いやすくはなりました。
特に父子家庭という方も当然いるわけですが、平成26年3月31日までの制度は父子家庭には遺族年金は支給されなかった。貰うとすれば18歳年度末未満の子にはなりますが、同居してる親(この場合は父親)がいると国民年金から支給される子の遺族基礎年金に関しては停止されてしまう(遺族厚生年金は停止されない)。面倒見てくれる親がいるんだから子には年金支給しなくていいよねって理由で。あと、遺族厚生年金に関しては妻の死亡時点で夫が55歳未満だったらそもそも貰う権利が無い。
このようにいろいろと面倒くさい話が出てきますので、一例を見ていきましょう^^
1.昭和50年2月14日生まれの女性(今は45歳)
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20歳になる平成7年2月はタイ人だったが、平成15年6月に日本に居住するようになった。平成15年6月から平成17年9月までの28ヵ月間は国民年金に強制加入となる。平成15年中にサラリーマンの男性と婚姻(当時妻自身に年収130万円以上の収入があったから扶養には入れず)。
ところで、外国籍の人は昭和56年12月31日までは国民年金に加入する事は不可だったが、昭和57年1月からは外国籍の人も国民年金に加入できるようになった。平成17年10月から厚生年金に加入して、平成22年5月までの56ヶ月間働く。なお、この間の平均給与(平均標準報酬額)は30万円とします。
平成22年6月からはサラリーマンの専業主婦として国民年金第3号被保険者になり、令和2年4月中に亡くなる(年金記録は令和2年3月までの118ヵ月となる)。収入はあったが、年収は40万円ほどだった。
ところで、在職してる時に日本国籍を取得済みだった。日本国籍を取得すると平成7年2月から平成15年5月までの100ヶ月間のタイ在住期間はカラ期間になる。この死亡した妻の年金記録を整理すると、カラ期間100ヵ月、国民年金第1号被保険者28ヵ月、厚年期間56ヵ月、国民年金第3号被保険者期間118ヵ月の総合302ヶ月間。
さて、妻死亡時に残された家族は夫57歳(年収は800万円ほどで、死亡した妻とは同居だった)と子は17歳と16歳。この家族に遺族年金は給付されるのか。