GHQの秘密資産「M資金」信じ31億を失った、嘘のような本当の話

 

毎日以外の各紙が報じた「M資金」関連記事

【東京】
今年6月12日付朝刊で、3人逮捕をきっかけに、500字程度の短い記事を掲載。《毎日》が今回の事件とは別のものとして取り上げている「基幹産業育成資金」が今回の詐欺の材料だったように書かれている。これは多分、《毎日》の方が正しいのだろう。記事の最後にはこう書かれている。

「『M資金』は戦後復興をめぐる裏金などといわれるが、存在が確認されたことはない」と。

短い記事なので仕方がないかもしれないが、これは最低限の説明で、本当なら、これ以上の被害者をださないためにも、「M資金」についてもう少し具体的な説明が欲しいところだ。

【読売】
やはり今年6月12日付で記事を掲載。そして、《東京》同様、最後にM資金についてこのように書いている。

「M資金は、『連合国軍総司令部(GHQ)に接収され、海外に流出した旧日本軍の秘密資金』といわれるが、存在は確認されていない。昭和の頃から度々、融資詐欺に悪用された。」

少し詳しくなっており、最後に「度々、融資詐欺に悪用された」と書いている内容は特に重要。ただ、これは《東京》にも共通することだが、どこかで、「『M資金』は実在するかもしれない」と考える余地を残しているようであることが気に掛かる。確かに、「ない」ことを証明するのは困難だが、その点にこそ詐欺師らが目を付けていることを勘案すれば、もっと踏み込んだ表現をすべきではないのか。一番良い方法は、多面的な取材ということだろう。それは、次の《朝日》が果たしてくれている。

【朝日】
6月12日付では、「M資金とは…」という文章が記事の中に含まれていない。およそ2週間後の27日付では、2千字超の大きな記事を掲載。M資金については、「こうした詐欺は過去にもたびたび起きていて、GHQ経済科学局長だったマーカット少将の名前から、『M資金詐欺』と呼ばれる。」との説明。

《朝日》は、「M資金」が実在するか否かについて多面的に取材している。今回の犯人たちは、「財政法を持ち出し、『国は、法律を以(もっ)て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる』との規定が根拠だと説明した」とされている。しかし、これを財務省文書課の担当者に確認すると、「別に法律を定めない限り、国が資金を提供することはない」のだそうで、記者がM資金は存在するのかと問うと、「そのような資金は一切ない」と答えたとする。

《朝日》は「地下経済に詳しい情報紙の元編集長」にも取材していて、同様の手口を繰り返す詐欺グループは複数あり、「かつては詐欺グループが総会屋や暴力団と一体になり、被害発覚を恐れる経営者から追加で現金を脅し取ったり、融資を要求したりしていた」という答えを引き出している。

image by:Center of Military History, United States Army / Public domain

内田誠この著者の記事一覧

ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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