アパレルも「デジタル化」の時代。小売店の役割は物販から“体験”へ

 

そこで、私が「トレンド情報に基づくオリジナルパターンの作成と販売」を提案し、現在ではネット上で販売するようになった。まだまだ普及していないが、パターンが入手できるならば、縫製工場は生地を選ぶだけでアパレル製品を作れることになる。

こうなるとデザイナーの業務内容も変わってくるだろう。ブランドを維持するためのテーマ設定、そして、テキスタイルや付属の選択、パターンと生地とのマッチングが重要になる。これまでのデザイナーはスタイル画を描くのが仕事だと思われてきたが、今後は市場予測、ブランド価値を維持するためのテーマ設定やイメージ戦略等が求められるようになるだろう。

3.展示会DXを考える

これまでのアパレルのコレクションや展示会はB2Bだった。アパレル企業が、プレスと小売店のバイヤーに見せるための展示会だ。顧客はブランドの情報を雑誌等から入手し、商品は小売店の店頭から入手した。しかし、ファッション情報は、雑誌よりもインスタグラム等のSNSで入手する顧客が増えている。

そうなると、むしろインフルエンサーを招待し、自分で服を選んでもらい、プロのスタイリスト、ヘア&メイクアーティスト、フォトグラファー等でチームを作り、インフルエンサーをモデルにした1枚の写真を作るイベントを展示会と考えた方が良いのかもしれない。そのメーキング動画を配信するのも面白いし、そこでできた写真をアート作品として販売してもいい。その写真をネット上に上げ、そこから商品購入してもらったら、インフルエンサーに報酬を支払うことにすれば、インフルエンサーの新しいビジネスモデルになる。

そして、B2B、B2Cという区別も必要ないのかもしれない。というより、商品を届けるだけならB2Cでいいし、小売店を通すなら、それで付加価値が上がるか、顧客満足が上がるかが問われるのだ。

これまでの展示会は完成した商品を販売することが目的だった。しかし、商品の販売だけならネットで完結する。わざわざ人を集めて、商品を紹介するならば、それを着用してもらうことが重要だと思うのだ。つまり、リアルな展示会は商品の着用イベントとなり、販売はネット上の展示会というように分ければ良い。

ネット上の展示会であれば、完成品だけを展示するのではなく、デザイン画、1次サンプル、2次サンプル等をアップし、そこでの議論も公開してしまう。それで、顧客からの意見も募集する。これができれば、人気のない商品はボツにできるし、人気のある商品は予約注文を取ることもできるだろう。

情報公開は一般公開でもいいし、ある程度の制限を加えてもいい。例えば、年齢別に顧客の意見を聞いていくのも面白いし、サイズ別の顧客の意見を聞いても良いのではないか。クラウドファンディング型のオンライン展示会があってもいい。生産ロットに達したら生産開始となるのだ。

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