5.在職老齢年金の計算と、年金の退職改定
昭和33年10月7日生まれのC子さんは、年金受給開始となる61歳の令和元年11月分から年間84万円(月額7万円)の厚生年金を受給しています。この金額は61歳の前月までの記録で計算されたものです。
61歳以降も厚生年金に加入して働いており、月給与(標準報酬月額)は24万円とし、賞与は6月と12月にそれぞれ30万円ずつ貰ったとします。
63歳になってからの年度末の令和4年3月31日に退職する予定です。
令和3年12月の在職老齢年金と、退職後の年金はどうなりますか。
まず在職老齢年金の計算ですが、厚生年金月額7万円と標準報酬月額24万円、直近1年間に貰った賞与を12ヶ月で割った額5万円の合計を出します。この24万円と5万円を足した額を総報酬月額相当額といいます。
65歳未満の人は、その合計額が停止基準額28万円(65歳以上の人は停止基準額47万円)を超えると、超えた額の2分の1の額を年金停止とします。
・年金停止額→(総報酬月額相当額29万円+年金月額7万円ー停止基準額28万円)÷2=4万円の年金を停止します。
なので、年金月額7万円ー年金停止額4万円=3万円の年金が支払われます。
ところで、65歳未満の人は停止基準額が28万円であり、65歳以上の人は47万円を超えると年金が停止されますがどうして区別しているのでしょうか。
前者を低所得者在職老齢年金(低在老)といい、低賃金の在職者の生活を保障するために年金を支給する仕組みであり、後者を高所得者在職老齢年金(高在老)といって高所得者の年金を停止する仕組みという事になっています。
65歳前の人は基本的には報酬比例部分のような一部の年金を貰いながら、低賃金で働くという就労期間とされていて、65歳以降は引退して本格的な年金生活に入る期間と想定されていたからです。引退後も結構所得が高いなら、年金を停止しますと。
なお、令和4年4月からは65歳未満の人も基準額が47万円になります。働くと年金が停止されるというのは、高齢者の就労を促進している現代において阻害要因となってしまうという事で、停止基準額が緩和される事になります。
また、停止基準額を超えたらその2分の1を停止するという仕組みになっているのは、基準額を超えたらいきなり全額の年金を停止するという極端な事態を避けるためです。
さて、事例に話を戻しますが、令和4年3月31日になると退職するようです。月末退職の場合はその月(この場合は3月ですね)まで厚生年金期間とします。
退職した場合は退職して1ヶ月経過した日の属する月分から年金が改定(変更)されます。なので、令和4年4月分の年金から改定という事になります。
年金受給開始してからは、令和元年11月から令和4年3月までの29ヶ月間働きました。その間に稼いだ給与や賞与の総額を求めます。
24万円×29ヶ月+賞与30万円×5回=696万+150万=846万
846万円を加入月数29ヶ月で割ると、291,724円の平均標準報酬額になります。
すると、291,724円×5.481÷1,000×29ヶ月=46,369円となります。
よって、令和4年4月からの年金額は84万円+46,369円=886,369円(月額73,864円)に増額します。
※ 追記
60歳以降の継続雇用や再雇用は給与が極端に下がる事が多いです。
そのため、すべての厚生年金期間の給与を平均して支払う厚生年金額が下がってしまうのではないかと不安になる方もいます。しかしながら働いた期間(月数)が増えると、必ず年金額は増額しますのでご安心ください。
それでは今日はこの辺で!
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