死者は1万人以上。「安政江戸地震」の前夜に日本で起きていたこと

 

ところが、流通経済が発達したのに米価は安定していた為、収入は増えず、更に18世紀の後半からロシア船、イギリス船などの西洋諸国の船が日本近海に侵入するようになって海防の負担が大きくなってゆくと幕府財政は悪化しました。倹約、財政削減に努めますが、それでは追いつかなくなります。幕府は貨幣改鋳、つまり、金貨、銀貨に含まれる金、銀の量を減らし、大量の貨幣を発行して生じた差益により、財政を建て直しました。

しかし、大名の領国から徴収する考えはなく、田沼意次が現代で言う人頭税を発想し、大名の領国からも徴税しようと考えたようですが、大名たちばかりか幕府内からも大反発され、失脚の大きな一因となりました。江戸時代は地方自治が政治の基本、幕政は徳川宗家とその家臣たち、各藩の藩政は大名と家臣たちが行っていたのです。くどいですが、これが、原理、原則でした。

幕政は徳川宗家と譜代大名、旗本が行う、それ以外の者は誰であろうと関わること、ましてや意見も言えない、幕府開闢以来の原理、原則を阿部正弘は破ってしまったのです。

未曾有の危機、平時ではなく非常時だという判断からなのでしょうが、これはパンドラの箱を開けることになりました。

次週ではパンドラの箱が開いた幕末日本と江戸という大都市の構造、暮らしについて語ります。楽しみにしていてください。

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image by: Tokyo Metropolitan Library – Tokyo Shiryo Collection 0277-C56 – / public domain

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1961年岐阜県岐阜市に生まれる。法政大学経営学部卒。会社員の頃から小説を執筆、2007年より文筆業に専念し時代小説を中心に著作は二百冊を超える。歴史時代家集団、「操觚の会」に所属。「居眠り同心影御用」(二見時代小説文庫)「佃島用心棒日誌」(角川文庫)で第六回歴史時代作家クラブシリーズ賞受賞、「うつけ世に立つ 岐阜信長譜」(徳間書店)が第23回中山義秀文学賞の最終候補となる。現代物にも活動の幅を広げ、「覆面刑事貫太郎」(実業之日本社文庫)「労働Gメン草薙満」(徳間文庫)「D6犯罪予防捜査チーム」(光文社文庫)を上梓。ビジネス本も手がけ、「人生!逆転図鑑」(秀和システム)を2020年11月に刊行。 日本文藝家協会評議員、歴史時代作家集団 操弧の会 副長、三浦誠衛流居合道四段。 「このミステリーがすごい」(宝島社)に、ミステリー中毒の時代小説家と名乗って投票している。

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