課題は山積み。岸田首相「新しい資本主義」は「統制資本主義」だ

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昨年の自民党総裁選挙では「成長と分配の好循環」を目指すと意気軒昂だった岸田首相でしたが、現実に「富める者」へ求めた分配策と言えば、税優遇と引き換えにした賃上げ促進策程度でした。目指す「新自由主義からの脱却」はどうすれば実現可能なのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では、著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、賃上げにも報酬と罰を設定するなど、「統制資本主義」実現のために必要なことを例示。議論のベースに人間社会の理想像や感情論、倫理観が不可欠で、江戸時代のある思想が必要になると持論を披露しています。

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株式資本主義の転換とは

岸田首相は株式資本主義を変えるという。資本の論理ではないということは、統制資本主義ということになる。その検討。

株式資本主義を否定すると、資本の論理ではない論理で社会を制御する必要になる。この基本は統制法だ。統制資本主義の構築が必要になる。この統制法の制定には、江戸時代の思想が必要になるとみている。

賃金を上げるにも、報酬と罰を設定する必要がある。公正取引委員会などを使い規制強化に傾くことになる。大きな企業が中小企業の価格を抑えることを止めるにも規制法が必要になる。規制=統制であるから、統制資本主義と言える。

このように、すべてのことに規制法の制定が必要であり、物価統制法もそのうちに必要になる。新自由主義からの脱却とは統制資本主義と言い直してみても良いはずである。

その統制法の裏付けは、倫理観なり、目指す社会なりを想定しないといけない。この法律を守るのは人間であり、その人間の心に守る意識があるかどうかも問題になる。もし、人間として守れないと、闇取引が横行して、社会的な混乱が起きることになる。やくざの横行にもつながる。この議論をしていない。

泥縄式に規制法を作り、運用すると、統制法間に矛盾を起こすことにもなるので、新しい資本主義の目指す方向を明確化する必要がある。

もう1つ、1つ1つの統制法は、しっかり議論しないといけない。統制法が社会的な理想と人間としての規則感、自由感との調和が取れているかどうかのチェックが必要になる。このような議論のベースが、人間社会の理想像や感情論、倫理観であろう。

もう1つ、IT技術の進展で、AI化が進み、エッセンシャルワーカーと知的創造をする人たちの2つに労働が分解される方向である。管理的な仕事はAIで肩代わりできる。

知的創造は、余暇と仕事を曖昧にするし、人的ネットワーク間での知恵が重要になる。このため、自由な労働が必要な人たちであり、一方、エッセンシャル・ワーカーは正規労働で規則正しく働くことが必要である。この関係が、現在逆転していることで、社会がギクシャクしている。

ということで、この社会的な変化と、現状の法体系がミスマッチしている可能性もある。このような広範な議論の上に、新資本主義(統制資本主義)の思想が出てくることになる。私は、江戸時代の石田梅岩の心学が見直されることになるとみている。倫理と経済的合理性の調和がどうしても必要と思っているからだ。

温暖化防止のグリーン経済は、石油を使えないことで、プラスチックが使えないくなり、物の価値が上がることになる。もったいないが、再度注目を浴びることになり、物が持つ徳性を再度、定義されることになるとも思う。使い捨て経済からの脱却が必要になっているのである。

次の時代を見た統制法を制定してほしいものである。そのための議 論をするべきである。さあ、どうなりますか?

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image by: 首相官邸

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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