「普通にすごい」って正しいの?あなたも使っている“チャット言葉”の矛盾点

 

形容矛盾の表現として次のようなものもありました。

「わりと本当にすごい」

ある商品に対するコメントとして書かれていたものです。

「わりと」は、「わりあい(に)」という副詞のくだけた言い方です。「この冬はわりあい(に)、寒い日が少なかった」という具合に使います。漢字を当てると「割合(に)」となります。それが次第にくだけて「わり(割)に」となり、さらに「わり(割)と」というふうに変化したものです。

プラスなのかマイナスなのか

いずれも、予想していた程度を少し超えていた、期待を少し上回っていた、という意味です。この場合、「わりあいつまらなかった」「わりあい面白くなかった」などのように、マイナスの表現には使われません。

「本当に」という副詞は、「程度が甚だしい」という意味で、まちがいないと思えることを強調するときに使うことばです。

この場合の「すごい」は「程度が甚だしい」「常識では考えられないほど並外れている」という賞賛の意味となっています。これが、

わりとすごい=予想していたよりすごい
本当にすごい=並外れたほどすごい

というように、「わりと」と「本当に」が、それぞれ単独で「すごい」にかかるのであれば、違和感なく成立します。

「思っていた以上に、本当にすごかった」という趣旨として、「わりと=思っていた以上に」を使ったのかもしれません。しかし、くだけた言い方が用法として成立していないので、やはりしっくりきません。

しっくりこないという感覚がどの世代と共有できるのか、ことばの揺れがどの段階で人口に膾炙するのか、という点も興味深いところです。

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未來交創株式会社代表取締役/文筆家 朝日新聞 元校閲センター長・用語幹事 早稲田大学卒業、事業構想大学院大学修了 十数年にわたり、漢字や日本語に関するコラム「漢字んな話」「漢話字典」「ことばのたまゆら」を始め、時代を映すことばエッセイ「あのとき」を朝日新聞に連載。2019年に未來交創を立ち上げ、ビジネスの在り方を文章・ことばから見る新たなコンサルティングを展開。大学のキャリアセミナー、企業・自治体の広報研修に多数出講、テレビ・ラジオ・雑誌などメディアにも登場している。 《著書》 『マジ文章書けないんだけど』(21年4月現在9.4万部、大和書房)、『きっちり!恥ずかしくない!文章が書ける』(すばる舎/朝日文庫)、『漢字んな話』(三省堂)など多数。

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