「むし豚」「豚足」で大ヒット。京都発祥の居酒屋が東京で大繁盛の訳

 

ニッチな商品に根強いファンが存在

東京の「マルミヤ亭」はオープン4カ月が経過、よく知られる存在になった。まずインスタグラマーによって情報が拡散した。大衆居酒屋のホッピングを楽しみとする人にとって、上野・御徒町エリアに立ち寄る店が新たに加わったという感覚だ。

客層は類似の大衆居酒屋の中では比較的に年齢層が低い。20代から40代が主流を占める。“20代女性お一人様”というパターンもある。これは「豚足」目当てのお客で、豚足を堪能して帰路につく。ニッチな商品だがこのように根強いファンが存在する。また、すでに常連になった顧客の場合、看板商品の逸品とドリンク一杯で「さくっと」利用するパターンも見られるようになった。

オープン4カ月にして多くのリピーターに愛されている

オープン4カ月にして多くのリピーターに愛されている

そして、ここでも定國氏によるドリンクメニューの技が効果を大きく発揮している。それは焼酎の品揃え。まず「芋」では「だいやめ」640円、「フラミンゴオレンジ」650円、「蔵の師魂 The Pink」650円、「きろく」540円。「麦」では「泥亀」540円、「スパニッシュオレンジ」650円。さらに「スパイス」として「カルダモンTAKE7」650円というラインアップである。

焼酎品揃えに対する研究が同店のファンづくりにつながっている

焼酎品揃えに対する研究が同店のファンづくりにつながっている

これらの焼酎はいずれも特長がはっきりとしたものばかり。「だいやめ」は蔵元独自の熟成技術から生まれた「香熟芋」による新鮮な香味「フラミンゴオレンジ」はグラスに注いだ瞬間からみずみずしい洋梨とオレンジの詰め合わせが目に浮かぶような香りが広がる。「蔵の師魂 The Pink」はワインに似た香りの酒質。「麦」をスキップして「カルダモンTAKE7」は、カレーのスパイスのカルダモンでつくったリキュールで、スパイスが効いたエスニック料理などによくマッチする。

これらの焼酎の特長を定國氏がお客に魅力たっぷりに伝えることから、焼酎を求めるお客は「次はこれ」という具合に飲み進めていく。同店のメニュー構成では客単価4,000円当たりが想定されるが、焼酎の飲み比べを楽しむお客は8,000円、1万円になることもあるという。定國氏も、魅力的な焼酎の品揃えに余念がなく、複数の業務用酒販店と取り引きするほか、蔵元に直接出向いて仕入れを行っている。

「マルミヤ亭」のオーナー岩本氏が推進する個人事業主による運営委託の仕組み。そして、個人事業主が自分で店舗を構えることなく自身の強みをいかんなく経営に反映できるというこれらのスキームは、これまでの店舗展開にはない強みを発揮していくことであろう。

image by: 千葉哲幸
協力:株式会社ライト , 株式会社BASE

千葉哲幸

プロフィール:千葉哲幸(ちば・てつゆき)フードサービスジャーナリスト。『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)両方の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しい。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

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